菅首相の「脱炭素宣言」以来、日本の自動車各社も「創業以来の大変革」に向けて大きく舵を切った。電動化やモビリティの在り方の変化は、自動車産業を根本から覆すとされる。最大手のトヨタ自動車は、どうけん引するのか。サステナビリティ戦略を統括する大塚友美氏に聞いた。(聞き手・森 摂=オルタナ編集長、池田 真隆=オルタナS編集長)

サステナビリティの変革を積極的に進めたいと語る大塚氏
 ©Ben Yamaguchi

─菅首相のほか米中の脱炭素政策、新型コロナによる影響、SDGsの目標年まで10年を切るなど社会・環境を取り巻く変化は激しいです。

当社は2020年、豊田綱領を受け継ぐ「トヨタフィロソフィー」を策定し、当社のミッションを「幸せの量産」と定めました。社長の豊田はあらゆる場で「サステナビリティ」「SDGs」「幸せの量産」のメッセージを発信し始めました。全社的にそこに向かっていく理解の土壌ができたと思います。

─SDGsを理解していないと、非財務の取組みは「コスト」として扱われてしまいます。

これまで収益や台数を重視しがちでしたが、SDGs視点も入れて判断するようにしました。SDGs視点を入れた上で利益を出すように知恵を出し、競争力を磨くことが必要と考えています。

社長の豊田は「Youの視点を持った人材」を育てることが重要と考えています。Youの視点とは、「誰かのために考えて行動できる人材」という意味です。

2020年から人材評価においても「人間力」が加わりました。他者のために頑張ることができ、他者から学び、自分を変え続けられる力を指します。

ハイブリッド、日本では現実解

─英国と中国では2035年、フランスでは2040年にエンジン車の販売を禁止すると宣言しました。今後、自動車業界はどのような方向に動くと考えますか。

市場そのものは、予測が難しいです。グローバルでは地域ごとにエネルギーのベストソリューションが違います。ライフサイクルで見ると、再エネが普及していない地域では電気やEVの製造時にもCO2は発生します。それぞれの地域のエネルギー事情などに応じた「環境に良い車」の選択肢をご提供したいと考えています。

社会課題の解決が事業を拓く ©Ben Yamaguchi

─ノルウェーは2030年に脱炭素を目指し、2025年までに新車はすべて電動車にすると発表しました。

2015年に「環境チャレンジ2050」を発表して以来、継続的に取り組んできていますのでその力を発揮するチャンスと捉えています。昨年末にはFCV(燃料電池車)のMIRAIをフルモデルチェンジしました。

初代は「水素は爆発するのでは」というイメージの払しょくから着手したので、隔世の感があります。水素も現実味を帯びています。

─米国もバイデン民主党政権に変わり、パリ協定に復帰するとともに、グリーン政策を打ち出しました。