さて、最初の話に戻りますが、橋下市長に欠けていた「コンプライアンス感覚」とは、「こう言えば、相手はこう反応するだろう」を読む能力です。
常日ごろから相手と対話していないと、この感覚は研ぎ澄まされません。おそらく、橋下市長は外国人とこのような会話を今までしたことがなかったのでしょう。あるいは、外国人をステークホルダーとして捉えていなかったと想像できます。
こう書くと、企業経営者や公人の方たちは「微妙な問題は怖くて公の場で話が出来ない」と萎縮することも容易に予想できます。
猪瀬直樹・都知事も「イスラム発言」で非難を浴びた後、しばらくは海外に関した発言は慎むように周囲から求められているはずです。
しかし、これは誤った選択肢で、微妙な問題でも、相手との「対話」を重ねていけば、相手に受け入れられ、ともに未来を目指せるような前向きな発言ができるはずです。
企業人にとっても、政治家にとっても、外部ステークホルダーとの「対話」はとても重要な要素であり、是非、今からでも「対話」の練習に励んでもらいたいものです。
経団連の米倉弘昌会長も、その意味で、対話の姿勢や能力に欠けた人物と見受けられます。
米倉会長は福島原発事故後、一貫して「1日も早く原発を再稼働させることが日本国民にとって、経済界にとって最優先である」という主旨の発言を繰り返してきました。その言動に、「原発を抱える地方や住民と話し合おう」という姿勢は感じられません。
最近では、米倉会長の出身企業・住友化学が生産する「ダントツ」など、ネオニコチノイド系農薬について、欧州委員会が今年12月から2年間の使用禁止(モラトリアム)を決定しました。
欧州委員会の使用禁止決定は、世界的に問題になっているミツバチの大量死問題(CCD)において、ネオニコチノイドとの関係が疑われていることが背景にあります。そして日本でネオニコ農薬は野放しになっているのが実情です。