フロン対策格付け、ANAや旭化成など76社がAランク

記事のポイント


  1. フロン類対策の格付けで旭化成など76社が最高位のAランクに
  2. フロン類はCO2と比べて1万倍の温室効果を持つことが問題視されている
  3. 製造規制の高まりから、フロン対策に力を入れる企業がじわり増えてきた

一般財団法人日本冷媒・環境保全機構(JRECO、是常博理事長)はこのほど、プライム市場に上場する1653社を対象に、フロン類対策の格付けを行った。フロン類は温室効果ガスの一つであり、その地球温暖化係数はCO2の数百から1万倍に及ぶ。機器の点検管理状況や算定漏えい量などに関して、正しく開示した「Aランク」企業は、旭化成やANA、イオンなど76社(全体の5%)だった。(オルタナS編集長=池田 真隆)

フロン類はエアコンや冷蔵庫など様々な用途に使われているが、オゾン層の破壊や地球温暖化に及ぼす影響が大きいことが問題だ。

代替フロンであるHFC(ハイドロフルオロカーボン)の地球温暖化係数(CO2を1とした場合の温暖化の強さを示す値)は、二酸化炭素の1万倍に及ぶ。日本のGHG排出量は2014年から毎年減っているが、温室効果ガスの種別でみると、HFCだけ増加傾向にある2020年のHFCの排出量は5170万t-CO2で、排出量全体の4.5%に当たる。

JRECO(ジェレコ)では、フロン排出抑制法に関する理解の啓発を目的に、2021年度から上場企業を対象にフロン対策の格付けを行ってきた。統合報告書やサステナビリティ報告書などで開示した情報を調べ、取り組み状況を比較した。

Aランク入り企業は2年連続で増える

フロン排出抑制法に基づき算定漏えい量や定期・簡易点検状況などを適切に開示した企業を最高位の「Aランク」に位置付けた。Aランクは76社(全体の5%)だった。2021年の16社(全体の2%)、2022年の49社(全体の3%)からじわり増えてきた。

フロン類の漏洩は、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)が定めた「気候リスク」に該当する。統合報告書やESGデータブックなどへの環境対策の記載を充実する企業が増えたことが背景にある。

業種別では、化学・医薬品(Aランク23社、Bランク6社)、食料品(Aランク7社、Bランク6社)、陸運・海運・空輸(Aランク6社、Bランク3社)が高かった。

一方、情報通信(IT関連、放送局など)、サービス、金融業は環境関連の開示が乏しく、フロン対策に関連する記載が少ない傾向にあった。

賃貸で入居し空調機器類については管理会社に任せていたり、自社事業におけるフロン類の排出防止への意識が低い事が明らかになった。

2036年に「HFCはほぼ生産できない」

環境に深刻な影響を及ぼすHFCに、国際社会は規制を強化する。それが、2016年10 月にルワンダの首都キガリで採択した「キガリ改正」だ。特定フロン(CFC、HCFC)の製造を規制していたモントリオール議定書を改正し、製造規制対象にHFCも入れた。

キガリ改正は2019年1月1日に発効し、先進国では、2024年に大きな節目を迎える。2024年に、HFC製造量は2011~2013年比で40%削減を義務化する。2036年には85%削減(同基準年)を義務化するので、HFCはほぼ生産できなくなる。

例えば、スーパーマーケットやコンビニエンスストアで冷蔵・冷凍庫が使えなくなる可能性もある。

企業は、ノンフロン・地球温暖化係数が低い「グリーン冷媒」に切り替えるか、フロン類(CFC、HCFC、 HFC)が使われている製品の定期点検を行い、フロン類の排出を抑制する適切な管理を強いられることになる。

3年連続で企業8割がフロン対策に後ろ向き

冷凍空調インフラにとっては「存亡の危機」を迎えているが、多くの企業がフロン対策には後ろ向きだ。調査では、フロン排出抑制法の遵守について開示していない企業が1296社に及んだ。全体の82%に当たる。未記載の企業が8割を超えたのは、2021年の調査から3年連続になった。

JRECOは、冷凍空調機器が事業の持続可能性に不可欠なインフラであると認識する経営者が増えない限り、状況は変わらないと指摘する。

■Aランク入りした企業76社

  • 旭化成
  • イオン
  • いすゞ自動車
  • 出光興産
  • 伊藤忠商事
  • ANAホールディングス
  • AGC
  • エーザイ
  • エクセディ
  • NTN
  • 大倉工業
  • 小野薬品工業
  • カネカ
  • 九州旅客鉄道
  • 極洋
  • クボタ
  • クレハ
  • コスモエネルギー
    ホールディングス
  • JSR
  • J-オイルミルズ
  • ジャムコ
  • 新日本空調
  • 住友ベークライト
  • 住友化学
  • 積水ハウス
  • 積水化学工業
  • 積水樹脂
  • セコム
  • ソフトバンク
  • ダイキン工業
  • 大成建設
  • 大平洋金属
  • 太陽誘電
  • 高島屋
  • 中外製薬
  • 中国塗料
  • DIC
  • T&K TOKA
  • デンカ
  • 東亞合成
  • 東急
  • 東京応化工業
  • 東京瓦斯
  • 東京電力ホールディングス
  • 東ソー
  • 東邦瓦斯
  • 東北電力
  • 東洋インキSC
    ホールディングス
  • TOYO TIRE
  • 南海電気鉄道
  • ニコン
  • 日清食品ホールディングス
  • 日清製粉グループ本社
  • 日東工業
  • 日本触媒
  • 日本曹達
  • NIPPON EXPRESS
    ホールディングス
  • 東日本旅客鉄道
  • 日立製作所
  • ヒューリック
  • ファンケル
  • 富士通
  • プリマハム
  • 古河電気工業
  • ホシザキ
  • マクセル
  • 三井物産
  • 三越伊勢丹ホールディングス
  • 三菱倉庫
  • 三菱地所
  • 森永乳業
  • ヤオコー
  • ヤクルト本社
  • 山崎製パン
  • 古野電気
  • ワタミ
M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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キーワード: #脱炭素

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