記事のポイント
- 米JPモルガン、ステート・ストリートはCA100+からの脱退を表明した
- ブラックロックも米国本体の国内部門の運用については離脱を決めた
- 背景には野党共和党による独禁法に違反しているとする働きかけがある
米資産運用会社JPモルガン・アセット、ステート・ストリートの両社は2月15日、「CA100+(クライメート・アクション100プラス)」から脱退することを発表した。ブラックロックも米国本体の国内部門の運用について、CA100+からの離脱を決めた。資産運用会社が相次いで脱退する背景には、共和党による独占禁止法や受託義務に違反しているとする働きかけがある。(オルタナ総研フェロー=室井孝之)
CA100+は、2017年に設立した世界の機関投資家(国連責任投資原則(PRI)、年金基金、保険会社、投資ファンド、財団など)によるイニシアティブだ。2024年1月現在、700以上の投資家が参加し、運用資産残高は68兆ドル(約1京円)に達している。
同イニシアティブは、温室効果ガス排出量の削減を効果的に推進することを目指す。電力、自動車、航空、セメント、鉄鋼業界の排出量の多い企業170社に対し、TCFDに沿った気候変動関連情報開示とガバナンスの対応を求める。
対象企業は、エクソンモービル(米国)、BP(イギリス)、ロイヤル・ダッチ・シェル(オランダ)、アメリカン航空(米国)、デルタ航空(米国)、ロールス・ロイス(イギリス)、フォード(米国)などだ。
米ステート・ストリートは、CA100+の戦略が「弊社の独立したアプローチと一致しない」として脱退を決めた。
JPモルガン・アセットは、自社のサステナブル投資専門チームとリサーチチームの強みを生かし、独自のスチュワードシップ能力を発展させる方針で脱退を選択した。
2024年1月現在で参加する日本の投資家は、GPIF、日本生命、三菱UFJアセットマネジメント、上智学院、農林中金など24の投資家である。
CA100+がリストアップしている日本企業は、ダイキン工業、日立製作所、本田技研工業、三菱重工、ENEOSホールディングス、日本製鉄、日産自動車、パナソニックホールディングス、スズキ、東レ、トヨタ自動車の11社である。