CSR報告書に3つの潮流-「デジタル化」「対話」「ストーリー」

CSR報告書の第3の潮流は「ストーリー」だ。もともとCSR報告書は、アニュアル・レポート(年次報告書)にはない「非財務情報」を伝えるメディアである。

非財務情報はESG(環境・社会・ガバナンス)情報とも言い換えられ、いまや欧州のSRIで企業価値の8割を生み出しているという。

言うまでもないが、財務情報は「数字」の勝負だ。これに対して、非財務情報(ESG情報)は、「ストーリー」の勝負である。

これは欧州でも米国でも、いま最もホットな潮流だ。これについてはオルタナオンラインに掲載された、下記の二つの記事に詳しい。

「サステナブル・ストーリーテリング」でCSRを語る ――下田屋毅の欧州CSR最前線(23)
米サステナブル・ブランド会議でも「協働」「ストーリーテリング」「CSV」に脚光

ヤフー宮坂社長による対談の大きな特徴は、社長の生い立ちや趣味・志向が手に取るように伝わってくることだ。こうした「エピソード」や「生の声」が、ストーリーの組み立てにおいてとても重要な要素になる。

一方で、日本企業のCSR報告書冒頭に良く出てくる「社長挨拶」のコンテンツは当たり障りが無い、建前優先のものが多い。これでは興味を持って読んでもらうのは至難の技だ。

中には、本当に社長自身が書いたものかどうかすら疑わしい挨拶文もある。こうした企業の場合には「社長自らが語る」「社長自らが書く」ことが、本来のCSR報告書に近づくための、まずは第一歩になるだろう。

森 摂(オルタナ編集長)

森 摂(オルタナ編集長)

株式会社オルタナ代表取締役社長・「オルタナ」編集長 武蔵野大学大学院環境学研究科客員教授。大阪星光学院高校、東京外国語大学スペイン語学科を卒業後、日本経済新聞社入社。編集局流通経済部などを経て 1998年-2001年ロサンゼルス支局長。2006年9月、株式会社オルタナを設立、現在に至る。主な著書に『未来に選ばれる会社-CSRから始まるソーシャル・ブランディング』(学芸出版社、2015年)、『ブランドのDNA』(日経ビジネス、片平秀貴・元東京大学教授と共著、2005年)など。環境省「グッドライフアワード」実行委員、環境省「地域循環共生圏づくりプラットフォーム有識者会議」委員、一般社団法人CSR経営者フォーラム代表理事、日本自動車会議「クルマ・社会・パートナーシップ大賞」選考委員ほか。

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