■ALTキーワード:ペロブスカイト太陽電池
記事のポイント
- 「ペロブスカイト太陽電池」の開発が激化してきた
- 世界での市場規模は2035年に1兆円に達する見込みだ
- この電池は従来は応用が困難であった建物の窓や壁などに設置できる
2023年10月、岸田首相が「ペロブスカイト太陽電池を2025年に実用化させる」方針を示して話題になった。脱炭素社会に向けた投資戦略の一環としての発言だった。(新語ウォッチャー=もり ひろし)
ペロブスカイト太陽電池とは、主流であるシリコン系に代わる太陽電池のことだ。ペロブスカイト構造(結晶構造の一種)を持つ化合物を用いるためこの名がある。
2009年に桐蔭横浜大学の宮坂力(つとむ)教授が開発した。現在、国際的な開発競争が激化している。世界での市場規模は2035年に1兆円に達する見込みだ(富士経済調べ)。
同技術の特徴は素材を「塗って」作れること。薄くて軽くて曲げられる装置を低コストで製造できる。従来は応用が困難であった建物の窓や壁、自動車の外面など、様々な場所での利用可能性も広がる。
変換効率の向上も著しい。シリコン系太陽電池の変換効率は市販品で15~20%だが、小面積のペロブスカイト太陽電池ではこれに匹敵する変換効率を実現しつつある。
一方でデメリットもある。耐用年数が短い、赤外線・紫外線・湿気に弱いなどの要素に加え、主流の素材には有毒の鉛が含まれる。このため代替材料の研究も盛んだ。