「安倍首相は『健康問題は今までも現在も将来も全く問題ない』と言っているが、事故直後に東京・金町浄水場の飲み水が放射性物質で汚染されたことはもう忘れたのか。汚染水対策の遮水壁の効果も不明だ。汚染水はコントロールされておらず、世界の英知を集めて対処しなければいけないのに、首相は世界に対して全く逆のメッセージを発信している」(鈴木氏)
■海洋放出容認は「危険」
汚染水対策を行う東京電力の説明も、「汚染水は港湾内で完全にブロックされている」という安倍首相の発言と食い違いを見せる。9日夜の記者会見で東電担当者は「港湾外での放射性物質濃度は限度を下回る。港湾内に設けたシルトフェンスの外での放射性物質の濃度はフェンス内の5分の1だが、トリチウムはフェンスを通過し港湾内外に出ていく」と話した。
汚染水の流出をめぐっては、原子力規制委員会の田中俊一委員長が「国の基準を下回る濃度に薄めて汚染水を海に放出するのはやむを得ない」との見方を示すなど、一部で海洋放出を認めるべきとの主張もある。
これに対して鈴木氏は「トリチウムのように回収できない核種もある中で、たとえ基準値以下でも海洋放出を行えば、さらに海への放射能汚染が強まることにしかならない。放射性物質の生物濃縮も考えられる。しかも一度認めれば、汚染水の流出も防げなかった東電が野放図に海洋放出を行う可能性もあり危険だ」と警鐘を鳴らす。
同NGOの海洋調査では、各地の漁師から海産物のサンプルの提供を受けることも多い。「福島の漁師も、海洋放出を通じて風評被害が強まることを懸念している。そもそも海の利用は日本だけで決められるものではない。濃度を薄めての海洋放出には反対だ」(鈴木氏)
安倍首相の発言をきっかけに汚染水問題がうやむやにされることは許されない。