企業の社会貢献の新潮流「コミュニティ投資」――アジアCSR最前線(4)

すでにコミュニティ投資に取り組んでいる企業が一致して主張していたのは、コミュニティへ投下した資源(インプット)、その単純な成果(アウトプット)、それらがコミュニティと企業にそれぞれどのような効果をもたらしたか(インパクト)を測定することで、多くの企業はプロジェクトの意義を理解しやすくなるということだった。また、効果の測定を行うことで、社内であれば経営層に、社外であれば株主にプロジェクトについての説明責任をより明確に果たすことができるようになったと指摘していた。

実務者が気になるのは、どうやって効果を測定したらいいかというところだろう。コミュニティ投資の効果を特定し、査定するために企業が使えるツールは数多くある。フォーラムでは、ロンドン・ベンチマーキング・グループによる「LBGモデル」とCSRアジアが開発した「コミュニティ投資スコアカード」が紹介され、討議された。

「コミュニティ投資スコアカード」は「LBG モデル」 の方法論を踏まえて CSRアジアが独自に開発した定性面と定量面から効果が測定できるモデルである。「コミュニティ投資スコアカード」を用いて効果の測定を行っているアコーホテルグループが同社のコミュニティ・プロジェクトでは目的や目標を定めたり、指標を定めて進捗管理したりする際に役に立ったことも発表された。

効果測定の枠組みをつくることも大切だが、同時にコミュニティ投資の効果測定ができる人材育成についても重要だということが多くの企業が指摘していた。

保険会社のアビバ、石油会社のシェブロン、リゾートのバンヤンツリーなどの企業担当者によれば、コミュニティ投資のイニシアティブに関わる人材が効果測定の能力を有しているとは限らないため、企業はこの過程において NGO や大学研究機関、諮問機関と提携することも可能だと指摘した。例えばアビバは世界のストリート・チルドレンのためのイニシアティブ「ストリートから学校へ」というプログラムのために大学研究機関と協働しているという。

筆者プロフィール【エスサー・テー】
CSR Asia クアラルンプール事務所のプロジェクトマネージャー。ステークホルダー・エンゲージメントやコミュニティ投資を専門とし、多国籍企業をはじめ東南アジア企業に対するコンサルティングで豊富な経験を持つ。CSR のコミュニケーションについても講演経験多数。

※オルタナ「CSRmonthly vol.10」(2013年7月5日発行)から抜粋

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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