記事のポイント
- カカオ豆の国際価格は上昇したが、カカオ農家の大半は国際貧困ライン以下
- チョコレート関連企業85社の「世界チョコレート成績表」をNGOが発表
- 海外企業に比べ、日本企業の取組の後れが明らかに
カカオ豆価格は高騰しているが、カカオ農家の貧困は解決していない。NGO2団体が3月21日、「世界チョコレート成績表(2024)」を発表した。チョコレート関連企業85社のカカオに関わる人権や環境など社会問題への取組を評価したものだ。日本企業の中で成績トップは不二製油だが、それでも海外企業より後れを取った。原料となるカカオ豆の最大生産地は西アフリカで、農家の大半は貧困層だ。人権侵害や森林破壊も横行している。(オルタナ編集委員・栗岡理子)
■カカオ農家の収入は1日1ドル以下
美味しくて健康にもよいとされるチョコレート。旺盛な需要のなか、西アフリカを襲った異常気象の影響によりカカオ豆生産量が減少した。その影響で、カカオ豆先物価格はここ3カ月で約2倍に上昇。しかし、この高騰はカカオ農家を助けることにはなっていないようだ。
森林NGO熱帯林行動ネットワークと国際環境NGOマイティ・アースはこのほど世界のチョコレート成績表を発表した。マイティ・アースのアムーライ・トゥーレ氏は「アフリカにカカオを紹介したのは欧州の植民地支配者だ。それ以来、人権侵害、搾取、環境破壊を引き起こしながらカカオが作られ続けている」と話す。
とりわけ貧困は深刻だ。カカオ農家の収入が国際貧困ラインである1日1.9ドルにも遠く及ばない。トゥーレ氏は「ほとんどのカカオ農家の1日の収入は1ドル以下で、特に女性は0.32ドルしか稼いでいない」と強調する。
こうした状況を憂慮したNGOらが、カカオ産業の調査を始めた。成績表は、オーストラリアの人権NGOビー・スレーバリー・フリーが率いるプロジェクトで、各国の市民団体や大学、コンサルタント会社などが協力して実施している。2018年より開始し、今年で5回目だ。
■足踏みする日本企業、世界に遅れ
今回対象としたのは、商社、加工業者、製造業者、小売業者など、チョコレートの関連企業 85社(回答63社、無回答22社)。対象企業を、①中・大規模企業・メーカー、②小規模企業・メーカー(カカオ取扱量1,000トン以下)、③小売業者の3つのカテゴリーに分け、それぞれ異なるアンケートを行った。
日本企業では、①に不二製油グループ本社、明治ホールディングス、伊藤忠商事、ロッテ、森永製菓、江崎グリコ、大東カカオの7社、②に有楽製菓、③にはセブン&アイホールディングス、イオン、ファミリーマートの3社が調査対象となった。
日本企業の中では、総合評価において不二製油グループ本社が最も高い評価を得たが、それでも大企業38社中26位と海外企業には後れをとった。次いで明治、伊藤忠の順に高評価。江崎グリコ、ファミリーマート、セブン&アイホールディングス、イオンは回答しなかった。
成績表は次の6分野で評価している。①トレーサビリティ・透明性、②生計維持所得、③児童労働、④森林破壊と気候、⑤アグロフォレストリー、⑥農薬使用。日本企業の多くは児童労働問題に一定の評価を得ているが、その他の面では足踏み状態だ。
日本のカカオ豆輸入量の約8割は西アフリカのガーナ産だ。トゥーレ氏は「カカオ農家が貧困の中で環境を破壊しながらカカオ豆を作っている。消費者の皆さんも企業に対し、良いチョコレートだけを提供するように働きかけてほしい」と、日本の消費者に協力を呼びかけた。