環境NGO「『2005年比3.8%減』は受け入れられない」

高田氏は「新目標は原発ゼロを仮定して策定したとされているが、原発に頼っていては温室効果ガス削減が進まないことは、日本が東京電力福島第一原発事故から学んだ教訓の一つ。温室効果ガス削減のために必要なのは、原発ではなく、政府が先頭に立って、自然エネルギーの導入と省エネ技術の普及を促進する明確な目標とロードマップを打ち出すことだ」とする。

国際的に信頼のある温暖化の知見である「IPCC第5次評価報告書第一作業部会報告書」では、「地球温暖化が人類の活動によるものであることはほぼ確実(95%以上)」だと結論付けている。

なかでも、気候変動の影響が顕著に出ているのが北極。最も高いシナリオ(RCP8.5)では、21世紀半ばの夏に海氷がほぼなくなる可能性が高いことも示されている。

そこで、グリーンピース・ジャパンは2012年から「北極を保護区に」キャンペーンを展開。15日には緊急抗議として、シロクマの着ぐるみが「安倍さん、CO2いつ減らす?今でしょ!」とメッセージを掲げ、渋谷から原宿を練り歩き気候変動への対策の重要性を訴えた。

認定NPO法人気候ネットワークも15日、「世界に恥じない数値目標への見直し」を訴える声明を発表した。

「『05年度比3.8%増』という数字には具体的な根拠が示されていない。攻めの外交として示された1兆6000億円の途上国支援の資金の内訳も不明確だ。温暖化対策は国民全体の協力が必要であり、公開された情報のもとで、市民参加のもとに、政策議論とともに目標設定がなされるべきである。今後『確定的な目標』を設定するにあたって、日本は、国際社会や将来世代にも恥じない目標を打ち出し、2050年に世界で半減するという人類共通の課題に正面から立ち向かい、真に野心的な目標へと引き上げることを強く望んでいる」

さらに、ワルシャワ会議に参加しているWWFジャパンの気候変動・エネルギーグループリーダーの山岸尚之氏は、次のように述べている。

「京都議定書の第1約束期間(2008年―2012年)における日本の目標は、『1990年比6%減』であった。東日本大震災の影響で停止した原発を補うために化石燃料の消費が大幅に増加した2011年の排出量ですら1990年比で3.7%。したがって、今回の新目標は、カンクン合意に提出した『1990年比25%減』からの大きな後退を意味するだけでなく、京都議定書の下での取組みレベルから見ても大きな後退となる」

「今回の日本政府の発表は、ここワルシャワにおける交渉に計り知れない負の影響を与える可能性がある。世界が排出削減に関わる野心のレベルを引き上げるための効果的かつ緊急の策について議論している中、その足を引っ張るような目標を発表した日本は、交渉における発言力を著しく低下させる恐れがある」

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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