記事のポイント
- 資生堂やP&G、ファンケルが「無意識の偏見」解消に取り組む
- 無意識の偏見は、潜在的に持っている先入観や、偏ったものの見方・考え方を意味する
- 資生堂は体験談を5000件集め、ウェブサイトで公開している
「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」の解消に向けて、企業が動き出した。「無意識の偏見」は、自分でも気付かないうちに潜在的に持っている先入観や、偏ったものの見方・考え方を意味する。資生堂は体験談の収集、P&Gは黒人クリエイターによる動画制作、ファンケルは研修を実施している。(シンカ・望月南)
■資生堂、5000件の体験談を収集
資生堂は2022年から「Unconscious Beauty Bias(「自分らしい美しさ」を制限する無意識の思い込みや偏見:UBB)」に着目したプロジェクト「SEE,SAY,DO.」を展開している。
同社は、UBBを無くすためには世の中に存在するUBBの実態を知ることが重要だと考え、世界10カ国で調査を行った。収集した5000件の体験談は、特設ウェブサイトで紹介している。
例えば、「タトゥーのせいで、薬物を使用しているかどうか聞かれた」「採用面接のとき、子どもを望んでいるか聞かれ、男性の同僚より給与が低くなると言われた」などがある。
調査したUBBの実態は、企業/団体向けのプログラムや中学生向けの教材の開発などにも活用している。
■P&G、黒人のありのままの日常を伝える
P&Gは、「Widen The Screen(スクリーンを広げよう)」というプログラムを立ち上げ、メディア業界における組織的な偏見や不平等の解消するに取り組む。
同社の公式ユーチューブチャンネルで公開されている動画「Widen The Screen to Widen Our View」では、主に黒人のクリエイターチームが制作、開発、演出、プロデュースを行った。動画では、黒人に対するステレオタイプ像ではなく、黒人の生活上での喜びなどありのままを伝えている。
動画は、2021年の全米黒人地位向上協会(NAACP)のイメージアワードで初公開され、黒人クリエイターの活動の場を広げた。
■無意識の偏見や思い込みに気付くきっかけを
ファンケルは、2022年10月から2023年1月にかけて全社員を対象とするアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)研修を実施した。
研修では、「将来の夢は消防士。この子は、男の子? 女の子?」「親が単身赴任しています。父親? 母親?」などの設問を通してディスカッションが行われた。参加者は、それぞれの回答の違いに驚き、自分の持つ偏見に気付いた。
社内では、研修後、無意識の偏見を意識する社員が増えるなど組織風土の変化があった。ファンケルは、今後もアンコンシャスバイアス研修を継続し、多様性を認め合う社風を作ることを目指す。