記事のポイント
- 長崎県大村市は、同性カップルの「事実婚」を受理した
- 「事実婚」は社会保険や年金で法律婚と同等の権利を享受することができる
- 当事者のカップルは「ほかの自治体にも波及するのでは」と期待感を表した
長崎県大村市はこのほど、同性カップルの事実婚を受理した。事実婚が認められれば、社会保険や年金で法律婚と同等の権利を享受することができるようになる。当事者であるカップルは28日に会見を行い、「今後、ほかの自治体にも同様の取り組みが波及するのでは」と期待感を表した。(オルタナ編集部・萩原 哲郎)

全国の自治体で同性カップルのパートナーシップ制度は広がりを見せているが、今回の事実婚の受理は極めて珍しい。
法律婚は戸籍上の夫婦である婚姻を指す。この場合、一方が亡くなった場合の相続権や所得税の配偶者控除などが認められる。
一方で「事実婚」は戸籍上の婚姻関係にないが事実上の婚姻と同様の状態にあることを指す。事実婚は役所への届け出は必要ないが、役所に申し立てることによって住民票に「夫(未届)」「妻(未届)」と記載することができる。
法律婚と異なって相続権などは認められていないものの、健康保険の扶養家族や国民年金の第3号被保険者などは事実婚でも認められている。
今回認められた松浦慶太さん・藤山裕太郎さんが事実婚を申し出たきっかけは、遠方への就職時にハローワークから支給される「移転費」だった。「家族の有無で移転費の支給額も変わってくる、私の場合も認められるのではないかと考えた」(松浦氏)。それを証明するために、事実婚を大村市役所に申し出たという。
市は届け出を受けて協議。このほど、認められることになった。松浦さんは「今まで書類に『夫』と書いてもらえたことなはく嬉しい、寄り添った配慮をしていただいた」と喜ぶ。藤山さんも「前例のない先進的な対応をしてもらった」と話し、「ほかの自治体でも同じような対応が増えていくのでは」と期待感を示した。
今年3月に最高裁は、同性カップルでも犯罪被害者給付金を給付できるとの判断を示した。同性カップルの事実婚の受理は、こういった流れを後押ししそうだ。