サッカーで広がる「アミザーデの輪」、地方からじわり

記事のポイント


  1. 性別や障がいの有無に関わらず、サッカーで仲間意識を醸成する大会がある
  2. ポルトガル語で「友情」という意味を持つ「アミザーデサッカー大会」だ
  3. 20年以上前に岡山県に住む夫妻が始めた取り組みだが、じわり広がっている

年齢や性別、障がいの有無などに関わらず、サッカーを通して仲間意識を醸成する大会がある。その大会の名称は、「アミザーデサッカー大会」。アミザーデはポルトガル語で「友情・仲間」という意味だ。20年以上前に一組の夫妻が始めた取り組みが、じわり広がっている。(オルタナ副編集長=池田 真隆)

千葉県花見川区のエスタディオサンフットで開いた「アミザーデサッカー大会」

「アミザーデサッカー大会」は、基本理念に「全ての人が等しくスポーツを享受すること」を掲げる。健常者、障がい者、老若男女が、サッカーを通して交流する大会だ。

2000年に富山県で第一回大会を開催して以来、今年で24年目を迎える「インクルーシブサッカー」の一大イベントに成長した。

今年9月末には、千葉県花見川区のエスタディオサンフットで、「アミザーデサッカー大会」が開催された。企画したのは、千葉県内で4つのサッカークラブを運営する有限会社サンフット企画の久保巳郎代表だ。

サンフット企画は、約1500人のサッカー少年・少女を育成した実績を持つ。その一方で、久保代表は、地域貢献にも力を入れる。練習グラウンドに食品寄付BOXを設置してフードバンク活動への協力などを子どもたちの親に呼び掛ける。サッカースキルを教えるだけでなく、地域や社会に貢献するサッカークラブを目指す。

アミザーデサッカー大会を千葉県で開催したのも、地域貢献活動の一環だ。2015年に富山県で開かれたアミザーデサッカー大会に参加したことがきっかけで、発起人の岡島俊樹さんと幸子さん夫妻から「関東でも開いて欲しい」と相談された。

岡島俊樹さんは、元サッカー日本代表で、現役時代は読売クラブで活躍した選手だ。岡島夫妻からの相談に、久保代表は二つ返事で快諾した。県内のサッカー協会や近隣クラブ、クラウドファンディングなどで協力者を集め、2021年に千葉県で初となる「アミザーデサッカー大会」を開催した。

「ブラインドサッカー」でコミュニケーションを学ぶ

すでに千葉県での開催が始まり、今回で4回目となった。同大会には、過去最多の約350人が参加した。スポーツだけにとどまらず、地元大学生ボランティア団体による縁日スペースも設けられ、多くの人々が楽しめる場になっていた。

参加者がチームを組んで競い合う試合や「ブラインドサッカー体験」に加えて、地元のチアリーディングチーム、千種太鼓のパフォーマンスなども行われた。ゲストとして参加した元日本代表でジェフユナイテッド市原・千葉で活躍した佐藤勇人さんによるサッカークリニックもあった。

ブラインドサッカーでは声を出し合い、コミュニケーションを取ることが不可欠だ
元日本代表でジェフユナイテッド市原・千葉で活躍した佐藤勇人さん(右端)

開会式では、千葉市サッカー協会の小川智之会長が、「老若男女問わず、サッカーを楽しんでほしい」と、スポーツを通じたインクルーシブな社会の実現に向けて挨拶した。

親子で参加した保護者からは、「子どもにとっても、大人である私自身にとっても、世代やハンデキャップなどの垣根を超えて、多くの方とスポーツを楽しむ機会は貴重な経験になった。多様性についても、子どもと一緒に学ぶ良い機会になった」という声が聞かれた。

千葉県での4回目となるアミザーデサッカー大会を終えた、久保代表は、「継続は力なり、サッカーを楽しむ人を増やし、サッカーファミリーを築き上げていきたい」と語った。

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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キーワード: #ジェンダー/DE&I

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