生物多様性増進活動促進法案が4月12日、参院本会議で可決され、成立した。民間事業者の生物多様性保全エリアを国が認定する制度「自然共生サイト」を法制化する。2030年までに陸・海の30%以上を保全する目標「30by30(サーティー・バイ・サーティー)」の達成を後押しする狙いだ。(オルタナ副編集長=吉田広子)
2022年に生物多様性の国際目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)」が採択され、「30by30目標」などの目標が掲げられた。日本政府は2023年3月、「生物多様性国家戦略2023―2030」を閣議決定し、生物多様性の損失を止め、反転させる「ネイチャーポジティブ」を目指す。
環境省は2023年度から、国立公園などの保護地域以外でも、生物多様性が豊かな地域の保全を進めようと、国が民間の保全地域を認定する制度「自然共生サイト」を開始した。これまでに、「サントリー天然水の森(日光市)」や、本田技研工業の「モビリティリゾートもてぎ(栃木県茂木町)」など、184カ所を認定した。
今後、生物多様性増進活動促進法案に基づき、「自然共生サイト」が法制化される。
一方、WWF(世界自然保護基金)ジャパンは、「自然共生サイト」で認定された地域が、そのまま「OECM(保護地域以外で生物多様性保全に資する地域)」として、国際データベースに登録されることに対して懸念を示す。
生物多様性が乏しいエリアがOECMに含まれてしまい、「30by30」目標にカウントされてしまう可能性があるからだ。OECMの条件は最低限にとどまり、運用は各国政府に委ねられていることもある。
WWF(世界自然保護基金)ジャパンは、「広さだけでなく、生物多様性の『質』も、十分に維持できるような保全の取り組みが求められている」とし、FSC(森林管理協議会)認証の有効活用も提言した。