「牛ふん堆肥の粒状化」で循環型農業を後押し

記事のポイント


  1. 静岡県の企業が「牛ふん堆肥の粒状化」の技術開発に成功した
  2. 重量に伴い、牛ふん堆肥の運搬や散布が難しいという課題を解消した
  3. 畜産農家と耕種農家の両方の要望を満たし、循環型農業を後押しする

堆肥卸売業を行う富士見工業(静岡市)はこのほど、牛ふん堆肥の粒状化に成功した。重量を約25%低減し、運搬を効率的にする。粒状化することで、専用の機械を使わずに散布できるようになった。循環型の農業を後押ししたい考えだ。(オルタナ編集部・下村つぐみ)

粒径2〜8mmの粒状化した牛ふん堆肥

家畜ふん堆肥の利用は、その重さや、散布に専用の機械が必要であることから、耕種農家での使用が減っているという。

畜産農家は、廃棄物処理業者に依頼して家畜のふん尿を処分する。牛ふんが堆肥として使われなければ、処分量が多くなりコストがかさんでしまう。

富士見工業は、耕種農家の牛ふん堆肥の使用を推進するため、静岡県畜産技術研究所と共同で、「牛ふん堆肥の粒状化」の技術を開発した。牛ふん堆肥を粒径2〜8mmの粒状にして、機械による撒布を可能にした。同社は2024年から試験販売を行う予定だ。

これまで牛ふん堆肥の粒状化に成功した事例は少ない。牛ふんには、寝床に敷く剪定枝や稲ワラ、もみ殻などの繊維質が含まれ、上手く丸めることが難しいからだ。

耕種農家は、堆肥と化学肥料を混ぜ合わせた、混合肥料を使用することが多い。化学肥料はほとんどが粒状で、堆肥も粒状であれば混ぜ合わせやすくなる。耕種農家も高騰リスクのある輸入肥料ではなく、国内肥料を選択しやすくなる。

日本政府は2021年3月に「みどりの食料システム戦略」を策定し、2050年までに「耕地面積に占める有機農業の取組面積を25%に拡大」「化学肥料の使用量30%低減」といった目標を掲げる。家畜堆肥の活用は、資源循環の観点で重要視されている。

同社企画開発部の中村吉徳氏は、「農家の人からは、牛ふん堆肥の粒状化が進めば使用したいという声がある。畜産農家と耕種農家の両方の要望を満たす堆肥になると考えている」と語った。

editor

オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

執筆記事一覧
キーワード: #生物多様性

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..