CSRを取締役に持ち込む方法――下田屋毅の欧州CSR最前線(34)

■ プラン A はいかにして始まったか

プランAの導入から3、4年は、推進するのが非常に難しかったということ。マイク・バリー氏は、「プランAをコスト削減とベネフィットとして金銭に換算することで、社内の財務チームと情報を共有し、ビジネスのケースとして形にすることが、まず必要だった。

そこでそれぞれがCSRの推進に自信を持つことができていった。形のないものについてディスカッションするのは難しいし、それについてやろうとするのも難しい。CSRをビジネスの結果として見せることが必要」と話す。

有形の効果とともに、無形の効果として信頼性、従業員のモチベーションなどの向上をすることもでき社内にCSRを推進していく「自信」を構築していくことができたという。

また、さらにマイク・バリー氏はリーダーシップの必要性を強く話してくれた。「M&Sの取締役・幹部などトップ130のリーダー達には、プランAのターゲットのそれぞれに責任が振り分けられている。

これらのサステナビリティに関する課題をビジネスのケースとして、各自がフォローアップしなければならず、リーダー達の個人の業績評価と収入に結び付いている。リーダー達は自ら計画を作成して管理する必要がある。戦略的なリーダーシップが目標を達成するために必要となる」という。

M&SにおけるプランAは変革の実現を可能にする要因で、プランAを介して変革とM&Sの価値の一つであるイノベーションを養成することができたという。プラン A は、ビジネスバリューを生み出す 21 世紀のプランとして位置付けられている。そして、ステークホルダーからの信頼を構築することができる今までの M&S のプログラムが進化したものと考えられている。

21世紀のプランとして、ステークホルダーからの信頼を構築することができる今までのM&Sのプログラムの進化したものと位置付けている。2020年までの目標を定め、食品・衣料品などの1年間に販売する29億個のアイテム全てが、プランAに組み込まれているとのこと。これらは持続可能な製品でなければならず、それが市場での優位性を確保することができるとのことだ。

今では先進事例として紹介される「プランA」だが、最初からうまくいっていたわけではない。是非、自社のCSRプランをビジネスのケースとして取締役に提示し、変革を実現する要因として機能させて、トップダウンでの戦略的CSRの推進を試みてほしい。

shimotaya_takeshi

下田屋 毅(CSRコンサルタント)

欧州と日本のCSR/サステナビリティの架け橋となるべく活動を行っている。サステイナビジョン代表取締役。一般社団法人ASSC(アスク)代表理事。一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会代表理事。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。執筆記事一覧

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