日本で唯一、クロチアニジンを製造しているのは、住友化学だ。「ダントツ」「フルスウィング」「モリエート」などの商品名で販売している。
農水省消費・安全局農産安全管理課農薬対策室の担当者は、オルタナの取材に対して「農薬メーカーである住友化学や農薬販売会社などの使用者から、殺虫効果を高めるために基準値引き上げの申請を受け手続きを行った」と答えた。
所管の厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課は、農水省からの要請を受け、審査を行い、基準値案を設定した。
ところが、厚労省が基準を評価する際の主要な根拠としている農薬評価書に載っている発達神経毒性を巡る安全性の根拠は、住友化学から提出された、2000年に作成された未公表の論文1本だけだった。
こうした状況を受け、国際環境NGOのグリーンピース・ジャパンや反農薬東京グループなど5団体は3日、厚労省に申し入れを行った。
「クロチアニジンの残留基準の緩和の検討を直ちに凍結すること」「ホウレンソウ、カブの葉などの40ppmの高い基準緩和案を即時撤回すること」を求めたところ、食品安全部基準審査課からは「基準値案を検討し直す」との返答があったという。
昨年10月に行われたパブリックコメントには、1000件を超える意見が集まったといい、「現在、パブコメを精査している状況」という。
5団体は厚労省に「メーカーが基準を超えるような適用拡大を申請するたびに、残留基準を緩和するという厚労省の対応は許されない。厚労省は食品安全のリスク管理機関として、国民の残留農薬の摂取を最小化できるよう、その責を果たすこと」を強く訴えている。
グリーンピース・ジャパンは2月13日まで、基準値引き上げの撤回を求めるオンライン署名を公式サイトで受け付けている。
◆ 【緊急オンライン署名】農薬の残留基準を上げないで!(2月13日まで)
◆「食品、添加物等の規格基準の一部改正(食品中の農薬(クロチアニジン)の残留基準設定)」に関する意見の募集について/命令等の案
※パブリックコメント用の資料です。対象品目と基準値案が確認できます
◆「ミツバチ大量死はネオニコ系農薬と強い相関」、金沢大学の教授らが論文発表