リクシル簡易トイレSATO、25年に1億人の衛生環境を改善へ

記事のポイント


  1. リクシルは環境や社会課題の解決に向けて、「インパクト戦略」を推進
  2. 「衛生課題」など3領域でアウトサイド・インの視点で事業を展開する
  3. 簡易式トイレ「SATO」などで25年までに1億人の環境改善を目指す

リクシルは環境や社会課題の解決に向けて、「インパクト戦略」を推進する。「衛生課題」「水保全」「多様性」の3領域で各目標を定め、アウトサイド・イン(社会課題起点)の視点で事業を展開する。衛生課題については、簡易式トイレ「SATO」などで2025年までに1億人の環境改善を目指す。(オルタナ副編集長=池田 真隆)

簡易式トイレシステム「SATO」

リクシルは2021年にパーパス(存在意義)を打ち出すと、「パーパス経営」に舵を切った。掲げたパーパスは、「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」だ。

このパーパスを追求するため、インパクト戦略を定めた。「グローバルな衛生課題の解決」「水の保全と環境保護」「多様性の尊重」の3領域で事業を展開する。

この3領域の中で柱となるのが、衛生課題の解決だ。世界では、安全に管理されたトイレを利用できない人が約36億人(2021年)、家に手洗い設備がない人も約23億人(同年)いる。その結果、下痢性疾患で命を落とす子どもは毎日700人(同年)に及ぶ。

上下水道がない地域でも安全なトイレを

同社ではこうした社会課題の解決に取り組むことで、企業価値の向上を狙う。同社の社会課題解決事業の象徴が、2013年からバングラデシュで始めた「SATO」だ。開発途上国向けの簡易式トイレで、上下水道がない地域でも、安全な衛生環境を提供する。

SATOの仕組みはこうだ。自宅周辺に排泄物を貯める穴を掘り、その上にトイレ容器を設置する。少量の水で洗浄ができる。排泄物を流すときに開くカウンターウエイト式の開閉弁がハエなどの虫による病原菌の媒介や悪臭を抑える設計になっている。

SATOの主な対象は、途上国の女性や少女だ。採算性が課題だが、衛生課題が解決することで、同ブランドへの信頼が増し、長期的には顧客の開拓につながると考えた。まさに、SDGsが掲げる公式用語「アウトサイド・イン(社会課題起点のビジネス創出)」の好事例である。

SATOのビジネスはライセンスをパートナーと結ぶことで現地で生産する体制を構築した。バングラデシュでは、南アジア最大級のプラスチック生産企業RFLとライセンス契約を締結し、同社が国内に持つ2000店の販売ディーラーを通して小売店で販売する。

トイレ用の穴を掘る職人もおり、現地での雇用の創出につながっている。

これまでにSATOは45カ国以上に展開し、約750万台出荷した。約4500万人の衛生環境の改善に貢献してきた。

2025年までに「1億人」という目標に向け、現地でコミュニティを持つNGOなどとのパートナーシップを強化する狙いだ。

リクシルの坂田優・SATO事業部アジア地域営業リーダーは、「地方部でコミュニティの健康支援などを行うNGOなどと連携し、衛生課題の啓発を通して、SATOを広げていきたい」と話した。

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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キーワード: #SDGs

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