記事のポイント
- どの国も格差の拡大によって、「自国主義」に陥る可能性がある
- 「社会がサステナブルであるか、潮目を迎えた」と水口剛氏は指摘する
- 外部不経済を社会全体で削減し、「公正な移行」を考えることが重要と訴えた
「社会がサステナブルであり続けるか、潮目を迎えた」。サステナブルファイナンスに詳しい高崎経済大学の水口剛学長はこう言い切る。どの国も格差の拡大によって、自国主義に陥る可能性があるとし、外部不経済を社会全体で削減し、ジャストトランジション(公正な移行)を考えることが重要と訴えた。(オルタナ副編集長・池田 真隆)
「もしトラ」現象を考えるには、なぜトランプに人気が集まるかを考察すべきだ。第二次トランプ政権が誕生すると、米国のESG投資にとっては逆風にはなるが、それ自体は一時的で地域的なことだ。ESG投資やサステナブルファイナンスの勢いが変わることはない。
このことよりも、深く考えるべきなのは、「もしトラ」現象は今や世界のどこでも起きうるということだ。
共和党の支持層が多い州を見ると、一人当たりのGDPが低い州が多いことが分かる。つまり、格差の拡大によって自国主義に陥る。そして、米国で「もしトラ」現象を引き起こした。
こうした現象は米国だけでなく、世界のどこでも起きる可能性がある。今は、社会全体がサステナブであり続けるか潮目を迎えたと見ている。
格差を解消し、経済的な豊かさを実現するには、中間層の復権が欠かせない。それこそが、「ジャストトランジション(公正な移行)」である。
だが、現在はトランジションそのものが課題だ。やってみないと誰も分からないからだ。水素還元製鉄はいつ実現可能か、そのための十分な水素は供給できるのか。検討課題は尽きない。鉄から木造へという議論もあるが、生態系への影響も考えないといけない。
本当に何が正しいのか簡単には分からない。企業は自社の戦略のもとに技術開発し、投資家は目利きを下す。良いものは、その市場メカニズムの中でしか生まれないだろう。
ジャストトランジションには、正しいインセンティブと科学的な知見の蓄積が求められるはずだ。企業にも投資家にもだ。
■格差の縮小とトランジションの同時解決を