日本発コンポスト、生ごみの分別回収を義務化したフランスに

連載: 「コンポストと循環経済に挑む女性たち」(3)

記事のポイント


  1. フランスでは2024年1月から、生ごみの分別回収が義務化された
  2. 「LFCコンポスト」は、2021年からフランスを拠点に欧州でコンポストを販売する
  3. 海外では、フランスに続きモンゴルでも、人材育成が進む

フランスでは2024年1月から、生ごみや草木・枝などの有機廃棄物を発生源で分別回収することが義務化された。福岡発スタートアップのローカルフードサイクリング社(LFC)は、2021年からフランスを拠点に欧州で「LFCコンポスト」を販売する。LFCは海外ではフランスに続き、モンゴルでも人材育成が進んでいる。(オルタナ副編集長・北村佳代子)

フランスは、事業者向けに義務化されていた生ごみや草木・枝の分別回収を、今年1月から各家庭にまで対象を広げた。

「分別方法は各自治体にゆだねられているが、罰則規定もなく、告知も十分になされておらず、施行から2か月経つが市民の認知が進んでいない」。そう話すのは、LFCフランスの川波朋子氏だ。

パリ市内に住む川波氏は、市が数百メートルおきに生ごみ回収ボックスを設置したことを確認している。しかし、その設置自体の認知も十分地域住民に広がっておらず、住民が「捨てに来ない」ことが問題となっているという。

パリ郊外に設置された生ごみ専用回収BOXはネズミの侵入などを防ぐために暗証番号ロック付き(写真提供: ローカルフードサイクリング株式会社)

■生ごみを捨てないソリューションへのニーズは高い

それでも、生ごみを廃棄せず資源として堆肥化できることの認知は、日本より広がっていると川波氏は言う。義務化以前から、郊外には木枠のコンポストを無料配布する自治体もあったほか、パリ市でも一時、実証実験で「ミミズコンポスト」(微生物だけでなくミミズを使って有機物を堆肥化させるコンポスト)を無料配布していた。

「ミミズコンポストやボカシ(液肥を抽出して密閉容器に入れるタイプ)コンポストで失敗し、ちょっとトラウマを抱えながらも、生ごみを捨てないソリューションを探している人が多い」と話す川波氏が、そうしたコンポストの挫折経験者から聞いた話も興味深い。

「ボカシは二軒先まで臭いがするので無理だった」
「ミミズコンポストは、レモンやニンニクなど刺激の強い食べ物を入れるとミミズが死んでしまうなど、禁止事項が多かった」
「夏のバカンスから帰宅したら、コンポストの中のミミズが全員逃げ出していた」

■LFCは、フランスの気候に合わせた仕様で展開

フランスの気候に合わせたLFCフランスの「LFCコンポスト」(写真提供: ローカルフードサイクリング株式会社)

LFCは2021年からフランスで「LFCコンポスト」の製造・販売を段階的に進めてきた。当初は卸売り販売をメインに、フランスやスペイン、イタリアでの販売を開始し、徐々に定期購入の個人顧客も開拓していった。定期購入顧客はオランダやルクセンブルク、スイス、スウェーデンなどにも及び、その数も1000世帯を超えた。

初心者でも取り組みやすく、また集合住宅のベランダにも置ける手軽さは好評で、特に異なるコンポストを経験した人からは、「すごく簡単だ」と支持される。日本同様に、ユーザーの質問にもメール等で対応する点も、継続につながっている。

また価格競争力もある。ミミズコンポストやボカシの価格が大体90~150ユーロ(約14700~24400円)なのに対し、「LFCコンポスト」は60ユーロ(約9800円)だ。

フランスでの展開にあたっては、日本に比べ外気温が低く、湿度も低い乾燥した気候条件に合わせた工夫を施した。バッグは内袋を使う二重構造とし、その生地は、日本のよりも厚手の再生フェルトを採用した。

また製造は、難民やハンディキャップのある人材を採用するパリ郊外の服飾関連団体が手がける。

■「パーマカルチャー」への関心も高まる

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北村(宮子)佳代子(オルタナ副編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ副編集長)

オルタナ副編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部。

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