カカオ豆の価格高騰は氷山の一角、世界で争奪戦も

記事のポイント


  1. 3月末、カカオ豆の先物価格はニューヨーク市場で史上最高値を更新した
  2. 主要金属である銅の先物価格を上回り、この1年で3倍以上に値上がりした
  3. 違法な金採掘によりカカオ農園が破壊され、世界的にカカオ豆の争奪戦も

3月末、カカオ豆の先物価格はニューヨーク市場で1トンあたり1万ドルを超え、史上最高値を更新した。主要金属である銅の先物価格を上回り、この1年で3倍以上に値上がりした。(認定NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパン事務局長=潮崎 真惟子)

主要因は西アフリカにおけるカカオの不作だ。世界のカカオ生産の6割を占めるコートジボワールとガーナで干ばつや大雨による洪水などの異常気象に加え、病害虫が深刻化した。

カカオ農園では雨季に広がりやすいブラックポッド病や、虫を通して感染するカカオ膨梢ウイルスが蔓延し、今後も収穫への影響が懸念される。

さらには違法な金採掘によりカカオ農園が破壊される事象も起きるなど、問題は複合的だ。世界的にカカオ豆の争奪戦が起きている。

問題の根源には、気候変動による異常気象と、カカオ農家の貧困問題がある。カカオは主に家族経営などの小規模農家により生産されており、国際的な貧困ラインを下回る貧困状態の生産者が多い。貧困状態にある農家は異常気象対策の投資が難しいため影響を直に受ける。

実際に4月に筆者がガーナのアファフォ州のカカオ生産者に話を聞くと「急に気候変動で全てを失ってしまった。これまでカカオを1トンの収穫できていた土地から、1-2袋分(100kg程度)しか収穫できないこともある。

雨が降りすぎたり降らなかったりするし、病害虫も増えて、生産量が下がってしまった。若い農家たちはカカオ農業から離れていっている」「カカオセクターにおけるサステナビリティは消えつつある」と話す。

価格が高騰しても、そもそもの生産量の減少等を背景に、末端のカカオ農家の収入は増えていない。

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潮崎 真惟子(認定NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパン事務局長)

デロイト、オウルズコンサルティングにて企業・政府・NPOに対する事業戦略やサステナビリティ分野のコンサルティングや人権デュー・ディリジェンス事業に従事し、2021年より現職。「児童労働白書2020」執筆

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キーワード: #ビジネスと人権

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