味の素とキユーピー、競合が共同回収で手を組んだ「舞台裏」

記事のポイント


  1. 味の素とキユーピーは7月から使用済みマヨネーズボトルの共同回収を始めた
  2. 環境・人権課題解決へライバル同士が手を組む動きが相次ぐ
  3. 「生活者の協力」というハードル越えを協働でめざす

味の素とキユーピーは7月1日から、使用済みマヨネーズボトルの共同回収を始めた。小売店に回収ボックスを設置し、生活者に対して、使用済みマヨネーズボトルのリサイクルへの協力を呼び掛けた。環境や人権の問題は1社だけで解決することが難しく、ライバル同士が手を組む動きが相次ぐ。(オルタナ副編集長=池田 真隆)

マヨネーズボトルの回収ボックス。使用済みマヨネーズボトルはごみではなく、資源だと生活者に伝える

イトーヨーカドー溝ノ口店(川崎市)は7月1日、マヨネーズボトルの回収ボックスを店内に設置した。巨大なマヨネーズ型の回収ボックスを前に立ち止まる買い物客は少なくない。

回収ボックスには、「マヨネーズボトルに戻そう!!」と大きく印字したパネルを貼り、その下には回収方法を説明したイラストを付けた。

使用済みマヨネーズボトルの回収方法は次の通りだ。まず、フタとシールをはがす。その後、ボトルに水を3分の1程度入れて、振って洗う。ハサミでボトルを半分に切り、スポンジで洗い、乾燥させる。

これらの工程を経て、回収ボックスに入れると、ごみではなく、新しいボトルを作るための「資源」になる。

使い終えたボトルを回収して、新しいボトルにするリサイクルは、「マテリアルリサイクル」と呼ばれる手法だ。水平リサイクルと呼ぶこともある。石油原料から作る場合と比べて、大幅にCO2など温室効果ガスの削減を抑えることができる。

水平リサイクルでCO2排出量6割減も

ペットボトルのマテリアルリサイクルを確立したサントリーホールディングスは新たな化石燃料由来原料を使う場合と比較して約6割のCO2排出量の削減になったと公表した。

マヨネーズボトルのマテリアルリサイクルはまだ確立していないので、今後両社が開発に取り組み削減割合を示す予定だ。

だが、この手法を確立するためには「生活者の協力」が欠かせない。きれいなボトルしかマテリアルリサイクルに使えないので、回収ボックスに入れる際にフタやシールをはがし、洗うという一手間が必要だ。

コストの問題もある。従来の方法より原価は上がる。現状、マテリアルリサイクルに取り組むメーカーは自社でそのコストを負担している状況だ。外部不経済を誰が負担するのか、社会的に議論が必要だという声も出ている。

資源循環の仕組みを確立するには、これらの課題を乗り越えないといけない。1社だけで挑むにはハードルが高く、そのため協働が相次ぐ。花王とライオンは使用済みつめかえパックの回収で協働した。100%再生ペットボトルを目指してセブン&アイ・ホールディングスと日本コカ・コーラも手を組んだ。

今回、競合同士である味の素とキユーピーが手を組んだのも、そうした背景があるのだ。

回収量「100キロ」が技術検証に必要に

両社は海洋プラスチックごみの問題解決に向けた、イニシアティブ「クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)」の会員だ。このイニシアティブに参画する中で、資源循環を目指すために協業を決めた。

両社の国内マヨネーズ販売のシェアは約75%(ボトル使用量約3500t)に及ぶ。協働することでより多くの使用済みマヨネーズボトルを効率よく回収できると考えた。

今回の実証実験では、7月1日から1年間、イトーヨーカドー溝ノ口店(川崎市)に回収ボックスを設置する。

使用済みマヨネーズボトルを回収し、回収状態・品質・量などを確認した上で、マテリアルリサイクルの技術検証を行う。

この検証を行うには、一定の回収量が必要だ。味の素サステナビリティ推進部の島淳人・環境グループ長は、「技術評価には、最低でも100キロ程度のマヨネーズボトルが必要となる。検証する過程で更に必要になる可能性もある」と話した。

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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