ネスレはCSVの先進的事例としてポーター教授の論文にも出てくるが、そもそもCSVという名前は、ネスレのCSRを他社と差別化するために考え出したもので、ネスレ現会長であるピーター・ブラベック-レッツマット氏が、CSVをネスレが推進する中で、ポーター教授にこの言葉の使用を促したということだ。
■CSVは「人権とコンプライアンス」「環境のサステナビリティ」が土台に
パーソンズ氏は「ネスレのCSVは、人権とコンプライアンス、環境のサステナビリティなどの土台の上にあり、それら全体でネスレのCSR活動として構成されている」と話す。
ネスレのCSR活動は、「ネスレの社会ピラミッド」として3段構造となっている。一番下の土台が「人権とコンプライアンス」、二段目が、「環境サステナビリティ」、そして、一番上が「CSV」となっており、「CSV」はこの2つの土台の上にあり支えられている。
つまりネスレのCSRは、「CSV」だけでなく、それを支えている「人権とコンプライアンス」、「環境サステナビリティ」についても実施することでCSR全体をカバーしているのである。
さて、CSRの需要な要素をカバーする「ネスレ社会ピラミッド」だが、その一番下の土台である「人権とコンプライアンス」の部分には、「法令遵守の監視」、「責任ある広報とマーケティング」、「製品の安全と品質」、「腐敗防止」、「ネスレと人権」、「人権におけるステークホルダーエンゲージメント」、「リスク影響評価」、「安全衛生」が含まれる。
この中のどれもCSRの要素としては非常に重要でまさしく土台となるものだが、先進的に取り組んでいる項目としては、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に則った人権に関わる部分についてである。