「製品・サービスのCSV」は、製品・サービスという企業のアウトプットを通じて、社会問題を解決しつつ利益を創出するものです。ゼネラル・エレクトリックのエコマジネーションやトヨタのプリウス、各種BOP ビジネスなどがそれにあたります。
「バリューチェーンのCSV」は、企業活動そのものを通じて、社会問題を解決しつつ企業の競争力を強化するものです。ウォルマートは、容器包装の簡素化・軽量化と輸送ルートの効率化を通じて環境負荷を軽減しつつ、2 億ドルのコストを削減しています。
ネスレは、途上国の貧困地域のコーヒー農家を支援しつつ、限定された産地でしか入手できない高品質なコーヒー豆の安定調達を実現しています。
「クラスターのCSV」は、人材、インフラ、規制や事業慣行、あるいは自然資源など、企業活動を支える外部環境やステークホルダーへの働きかけを通じて、社会問題を解決しつつ企業の競争力を強化するものです。
マイクロソフト、シスコ、デルなどは、事業展開地域でIT教育を実施しています。こうした活動は地域の発展を促すとともに、不足しがちなIT人材を育成することで、自社の競争力も強化しているのです。
糖尿病治療薬で世界をリードするノボノルディスクは、中国での事業展開に先立ち、医療従事者や市民などに対して、糖尿病についての啓発活動を行っています。これも、社会問題を解決しつつ自社の競争力に直結する「市場の知識」というクラスターを強化している例です。
このCSVは、人々の本質的な懸念に根ざしており、今後の大きな潮流となることは、間違いありません。
本コラムでは、「CSVという新しい潮流をどう捉えるべきか」「CSVの3つの基本アプローチをどう具体化するか」「CSV を促進する社会の動きはどうなっているか」などについて、経営戦略理論や最新事例などを踏まえつつ、考察していきます。
【みずかみ・たけひこ】東京工業大学・大学院、ハーバード大学ケネディースクール卒業。旧運輸省航空局で、日米航空交渉、航空規制緩和などを担当した後、アーサー・D・リトルを経てクレアンに参画。CSR/サステナビリティのコンサルティングを主業務とする。
(この記事は株式会社オルタナが発行する「CSRmonthly」第1号(2012年10月5日発行)から転載しました)
水上 武彦氏の連載は毎月発行のCSR担当者向けのニュースレター「CSRmonthly」でお読みいただけます。詳しくはこちら