サラワク・エネルギー社はサラワクに電気を供給するマレーシア政府経営の公社だ。同政府は最近、水力発電のダム10カ所の建設を認可した。地域との衝突が多い業種であり、それを避けるために、地域とのコミュンケーションの過程を重視したという。

今では、この種のプロジェクトでも解決は、「言い値の支払い」ではなく、地域が意思決定プロセスについて情報を得ていることが必須であるという。企業と地域の間に情報量の違いがあれば、それが溝となり利害関係が生じてしまうからだ。従って、「最大の挑戦は、地域が利害意識で関わってくる以前にコミュニケーションを始めることだ」。

そこでサラワク・エネルギー社では戦略に基づいたデータから配布資料を作成し、数チームに分かれて異なるレベルでのコミュニケーションを行うことにした。まずは政治家からはじめ、次は地域のリーダー、そして草の根レベルでの対話を重ね、住民の期待に応えるようにした。昔ながらの「言い値の支払い」とは異なり、今のところ、良い結果が得られているという。

しかし、いまだに課題が残ることも事実だ。コミュニティとの交渉では通常、勝者と敗者が生まれ、敗者も何らかの形で利することが必要になるからだ。例えば、村長は以前のやり方だったらもらえていた「言い値の支払い」をもらい損なうかもしれない。

しかし、企業にコミュニティへの投資をさせたという功績を利益とみる可能性もある。

もうひとつの課題は、「言い値の支払い」方式からの移行だ。地域がライセンスに対する報酬をもらい慣れてしまえば、今後も支払いを受けて当然と思い、それを止めるのが難しくなる。企業の投資でコミュニティに雇用が創出される場合でも、人々は報酬から労働にはなかなか移りたがらない。

衝突をゼロにするのは難しい。しかし、継続的なコミュニケーションを行っていれば、衝突が起きた時にはそれを最小限にし、解決する助けにはなるはずだ。

(赤羽真紀子 CSRアジア日本代表 監訳)

【ミア・オーバーオール】CSR アジアのバンコクAIT センターのシニア・プロジェクト・マネージャー。貧困層向け開発を専門とし、食糧や気候変動、水資源問題など数多く従事。世界銀行、AccountAbility、世界食糧計画(WFP)と国連食糧農業機関(FAO)、国連開発計画(UNDP)の勤務を経て現職。

(この記事は株式会社オルタナが発行する「CSRmonthly」第2号(2012年11月5日発行)」から転載しました)

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