CSR は「ヨソモノ」「バカモノ」「ワカモノ」視点で【戦略経営としてのCSR】

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大久保 和孝(新日本有限責任監査法人CSR 推進部長)

CSRは、「社会の視点から事業を見つめ直し、環境変化に適応すること」である。解決困難な社会の問題と向き合うほど、当該企業の社会的な評価に繋がる。その背景には、解決困難な社会問題が山積みする一方、社会の価値観そのものが劇的に変化し、価値観が複雑化・多様化したことで、いずれの社会問題も簡単に解決策を見出すことができなくなっていることがある。そこで大切なことは、関係者(ステークホルダー)との対話と議論の中で、コンセンサスをとりながら互いの落とし所(解決策)を模索していくことだ。

「自分の事業を社会視点で見つめ直す」ことは、過疎地域の活性化を考えることに似ている。閉塞感を感じ、立ち行かなくなった時は、「ヨソモノ」「バカモノ」「ワカモノ」の視点を取り入れることで、発想の転換をはかるきっかけを作り、新たなことに取り組み、組織変革をもたらすことができる。

企業に置き換えると、まず、社内の力学や硬直化された組織に左右された思考に陥らないためにも、客観的な目線として「ヨソモノ」の視点を取り入れること。次に、自分の事業を外部の目線で見つめ直し、新しい発想や考え方に気付く。行動力のある社内の「バカモノ」が、それらの新しい発想や考え方を取り入れて、強い突破力・企画力で推し進める。そして、社内の「ワカモノ(若い社員)」がついていくことで新しいプロジェクトが推進され、組織内にイノベーションをもたらし、組織の活性化をもたらす。部署間のコミュニケーションの悪さや、職場仲間だけでの議論故に発想が内向き、限定的になっている現状を打破するきっかけを作り、組織のイノベーションを引き起こす原動力がCSRの推進だ。

CSRを推進する前提として、環境変化を自分事化する習慣を身に付ける必要がある。多くの過疎地域が活性化できずにいる主な要因は、当該地域の住民の多くが過疎化の原因を人口減少や経済の悪化といった外的要因のせいにし、他人事ととらえていることだ。素晴らしい特産品や、歴史的な文脈を持ち合わせていても、他人事の姿勢では問題解決にはならない。地域(社会)の問題を自分事化し、外部の視点を取り込み正面から向き合いながら解決策を模索していくことで真の解決策を見出す。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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