[CSR]九州から日本の農家を元気に――副生バイオマスの活用

九州事業所アグリ事業グループの高橋裕典さん
九州事業所アグリ事業グループの高橋裕典さん

■「副生バイオマス」とは

味の素九州事業所には国内最大級のアミノ酸製造工場がある。「パルスイート」や「ハイミー」といった主力製品の原料となる各種アミノ酸、核酸を製造している。

このアミノ酸を製造する際に発生するのが、「副生バイオマス」である。アミノ酸は、キャッサバやさとうきびなど植物由来の糖を発酵させることでつくられるが、その製造過程では、窒素分、アミノ酸などを含んだ副生バイオマスが発生する。

味の素は30年以上前から、この副生バイオマスを有機質の肥料として地域に還元する「バイオサイクル」に取り組んできた。一部では、有機質肥料「アミハート」や「早根早起」として販売している。

このバイオサイクルの取り組みを行政や他社と協働することで、さらに発展させ、生産者、流通、消費者それぞれの「価値の最大化」を目指すのが「バイオマスリンク in佐賀」プロジェクトだ。

■堆肥の製造過程で活用

下水汚泥と副生バイオマスを混ぜ合わせ混合堆肥をつくる。S&K佐賀の堆肥化施設で
下水汚泥と副生バイオマスを混ぜ合わせ混合堆肥をつくる。S&K佐賀の堆肥化施設で

佐賀市は「バイオマス産業都市構想」を掲げ、下水浄化センターと清掃工場から生じるバイオマス資源の有効活用に取り組んでいる。

佐賀市の秀島敏行市長は、「これまでの下水処理は『安全に施設を運営すればいい』という意識でした。これからの時代は、もう一歩踏み込んで、地球環境にどれだけ貢献できるか。水処理で発生する下水バイオマスをエネルギーや肥料に変えていきたい」と語る。

水処理で発生する下水汚泥には、肥料の原料となるリンが豊富に含まれている。だが、実用化は2割にとどまっている。

そこで国土交通省下水道部は食と下水道を連携させる「BISTRO下水道推進戦略チーム」を設置。佐賀市下水浄化センターでは、毎日約25tの下水汚泥が発生し、これを肥料化している。この肥料化の過程で、味の素の副生バイオマスを混ぜ、混合堆肥を製造するのだ。

「毎日5tも発生する『副生バイオマス』を何かの役に立てたかった」 味の素九州事業所アグリ事業グループの高橋裕典さんは、こう振り返る。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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