これらの課題に対して会社が既に取り組んでいたとしても、人権の視点からバリューチェーン全体における企業活動を整理・評価し、取り組みの改善・強化、リスクの予防・軽減を進めることが重要である。

2012年12 月10 日の世界人権デーに合わせて英国の人権と企業に関する研究所(Institute for Human Rightsand Business)が発表した「企業と人権に関する課題トップ10」には、日本企業(特に海外で事業を展開している企業)が取り組む必要のある課題が多数ある。その中から3 つ、特に重要な課題を紹介したい。
1. すべてのビジネスパートナー(サプライヤーや提携先)における人権の尊重
2. 人権リスクの高い国(中国、ミャンマーなど)や紛争地域への責任ある事業投資
3. 自然資源(土地、水、食料)の確保が人権に与える影響への対応

企業はどこまで取り組めばよいか?

人権デューディリジェンスの実施に際し、必ず議論となるのがその範囲やレベル感である。「どこまで取り組めばいいのか」といった問いに、一律の答えはない。

食品大手のネスレではサプライチェーンにおける農業従事者の包括的な人権評価を行っており、人権リスクが比較的高い三次サプライヤー以降も直接現場を訪問し調査対象としている。

また、アパレル大手のH&MはCEO 自らが自社のサプライヤーの多くが工場を構えているバングラデシュの首相を訪問し、労働者の法定最低賃金の値上げを要請している。

企業は自社の業種特性や状況に合わせて、自社および自社のステークホルダー(サプライヤー、ビジネス・パートナー、政府など)と共に人権尊重に取り組むことが求められている。人権デューディリジェンスの範囲を特定するためには、様々な立場のステークホルダーとの積極的なコミュニケーションが欠かせない。

【いまなか・ゆきこ】2007年よりイースクエアにて環境・CSRコンサルティング業務に従事。主にサステナビリティ先進企業のネットワークTheFrontier Network(TFN)の運営を担当。2012年にデンマーク人権研究所の企業と人権に関する専門家を招聘し、人権デューディリジェンスに関するワークショップを開催。

(この記事は株式会社オルタナが発行する「CSRmonthly」第4号(2013年1月5日発行)から転載しました)

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