[CSR]ヨーカ堂の「顔シリーズ」が13年目、生産者とのつながりが生む食の安全

■ 鮮度や味、何を優先にするか

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イトーヨーカ堂青果部シニアマーチャンダイザーの高橋幸氏

――「顔シリーズ」を展開するうえで、どのような課題がありますか。

顔シリーズは1点1点をトレースするため、他の商品と区別するパッケージに入れなくてはいけません。

例えば、せっかくの「朝どりレタス」でも、包装するプロセスを入れると店頭に並ぶのは翌日になってしまう。「これは根本的におかしいよね」という声が社内でも上がっています。安全・安心は大切な価値ですが、ほかにも鮮度や味など本質的に重要な要素があるわけです。

そこで、2014年3月から一部の野菜は袋に入れず、顔イラストと二次元コード入りのタグを付けたテープや輪ゴムで束ね、新鮮さを表現しています。最初の購入は「安全・安心」がきっかけだったとしても、リピーターは、品質が安定しているとか、おいしいとか、そういう理由で買い続けてくださっていると思いますから。

顔シリーズの生産者は、もともと適地適作をしているいい農家ばかりです。安全な上においしければリピーターが生まれ、消費者と生産者とのつながりが生まれる。これこそ「青果のブランド化」です。高くても安全・安心を選ぶお客様がいることは間違いありません。

安全・安心を確保するために手間をかけた分は価格に載せていますが、顔シリーズの場合、もともと産直品で中間コストがないため、値上げ幅は1割以下です。

――今後の抱負は。

生産者の顔を消費者に伝えるのと同時に、私たち小売には、お客様の声を生産者に伝える義務があります。いい話だけではなく、改善してほしいこともきちんとお伝えして、取り組みをより強固にしていくことが大事です。

これからは、生産者の励みになるような取り組みも始めます。「顔が見える野菜。100選」といったキャンペーンで、いい意味での競争を促すことも計画中です。安全・安心をしっかり担保しつつ、お客様には、単純に「おいしい」「鮮度がいい」という産直商品の魅力を感じてほしいですね。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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