太陽光パネルの大量廃棄は避けられる:リサイクルに必要な3つのポイントとは

記事のポイント


  1. 2030年代以降、国内で大量の使用済み太陽光パネルが発生する
  2. 太陽光パネルの再資源化に特化した初の法案も審議されている
  3. 関係各所への取材から、リサイクルに向けた3つの課題が浮き彫りに

2030年代から国内で大量の使用済み太陽光パネルが発生し、新たな廃棄物問題を引き起こすリスクが高まっている。こうした状況を受け、国会では太陽光パネルの再資源化に特化した初の法案の審議が進んでいる。リサイクルに実効性を持たせるには、何が必要なのか。リサイクル業者、NGO、環境省への取材から、3つの課題が浮かび上がった。(オルタナ副編集長=長濱慎)

◾️ FIT初期のパネルが寿命を迎える

太陽光パネルの大量廃棄が発生するのは、2012年の固定価格買取制度(FIT)を機に各地に設置されたパネルが寿命を迎えるためだ。経済産業省・環境省の資料によると、ピーク時の2040年代前半の廃棄量は年間最大約50万トンにのぼる。

これらを資源として有効活用するために「太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律案」が5月12日、衆議院で可決された。5月28日現在は参議院で審議が進められており、太陽光パネルの再資源化に特化した初の法制度が成立する見通しだ。

廃棄のピークは2040年代前半に(図:経済産業省・環境省)

◾️ガラスtoガラスのリサイクル目指す

石坂産業(埼玉県三芳町)は入間市にリサイクルプラント「太陽光パネル再資源所」を新設し、2025年6月から受け入れを始めた。同社は中間処理事業者として建設系の混合廃棄物を取り扱ってきたが、将来を見据えて太陽光パネルについても事業化に踏み出した。

同社が採用したのは「ホットナイフ法」だ。300℃以上に加熱した刃で封止剤を溶かし、ガラスとセルを分離する。この方法ではガラスを破砕せず板状のまま取り出せるため、不純物の混入を抑えた高品質なリサイクルが可能になる。

ガラスはパネル重量の約6割を占めており、その資源価値を高めることがリサイクル推進のカギを握る。従来は建材などへのダウンサイクルが主流だったが、将来的にはガラスtoガラスの水平リサイクルへ移行するのが理想的だ。

石坂産業・資源化生産部の 清水晶弘・太陽光パネル再資源所所長は、こう話す。

「水平リサイクル技術の開発はガラスメーカーを中心に取り組んでいるが、我々としても資源循環社会の実現に向けてできることに取り組んでいきたい」

一方で、試行錯誤も続く。清水所長は「パネルの個体差や劣化具合によって上手く分離できるときとできないときがある。目標とする1日あたりの処理能力8.88トンの操業を目指し、現在も工程の改善に取り組んでいる」と話す。

ホットナイフ法を用いた装置と清水所長
分離されたガラス
ホットナイフ法のフロー(図:エヌ・ピー・シーHP記載の説明図を基に石坂産業作成)

◾️課題1:誰がリサイクルに責任を持つか

パネルのリサイクルを円滑に進めるには、リサイクルに配慮した設計・製造が欠かせない。リサイクルの制度化を強く求めてきた環境NGO・グリーンピース・ジャパンの鈴木かずえ・気候変動エネルギー担当は、こう指摘する。

「メーカーが最後まで責任を持つ仕組みにしないかぎり回収率もリサイクル率も上がらず、循環型社会は実現しない。太陽光パネルのリサイクル制度は、包括的な拡大生産者責任(EPR)の確立に向けた先行事例になると期待している。そこに踏み込んでほしい」

拡大生産者責任(EPR:Extended Producer Responsibility)とは、メーカーが回収やリサイクルまで責任を持って行う考え方だ。背景には、1990年代に顕在化した家電やIT機器の大量廃棄問題がある。回収を自治体やユーザー任せにするのでは、限界があった。

そこで、OECD(経済協力開発機構)などがEPRを提唱。廃棄物を「資源」ととらえる循環型経済の考え方が普及するにつれ、欧州をはじめ各国・地域で制度化が進んでいる。いわばリサイクルの世界標準となったEPRだが、日本では容器包装や家電、自動車など対象分野が限られており、制度も複雑だ。

今回の太陽光パネルの法案では、責任の主体を「多量の事業用太陽電池の廃棄をしようとする者」つまりメガソーラーなどを持つ発電事業者とした。一方で、EPRについては慎重な姿勢を示す。その背景を、環境省の岡﨑雄太・太陽光パネルリサイクル制度グループ幹事はこう説明する。

「パネルは輸入品の割合が高く、さらには太陽光発電が普及し始めた2010年代からメーカーの約半分が入れ替わっている。新しい法律ができてから製造するメーカーに、自社製造分でない過去製品のリサイクルの責任を負ってもらうのは課題がある」

とはいえ、国もEPRの考え方を手放したわけではなく、法案にはメーカーや輸入業者にリサイクルや再資源化に配慮した設計を求める方針などが盛り込まれている。今後、具体的な制度設計へどこまで踏み込めるかが重要だ。

◾️課題2:リサイクルコストをどう減らすか

環境省や経産省の試算によると、太陽光パネルのリサイクル費用は1kWあたり8000円〜12000円で、埋め立て処分は2000円程度。リサイクル費用が埋め立ての4倍以上になる。

現行の廃棄物処理法は使用済みパネルの「適正処理」を求めているが、そこには埋め立てという選択肢も含まれる。太陽光発電事業者の6割以上がリサイクルを検討していないという調査結果もあり、コストを是正しないかぎり多くが埋め立てに流れる恐れがある。

グリーンピース・ジャパンの鈴木氏は「リサイクルを実質的に義務化する、強制力のある厳格な基準が必要だ」と訴える。

同NGOが3月に国内約1000人に行った「太陽光発電に関する意識調査」では、太陽光発電に肯定的・否定的を問わず約8割がリサイクルは必要と答えた。社会に受け入れられるためにもリサイクルを促すインセンティブが必要で、コスト低減はその大きな後押しとなるだろう。

環境省の岡﨑室長は「まずは費用効率的にリサイクルが実施可能な多量廃棄事業者を対象にすることでスケールメリットを働かせ、そこから段階的に規制を強化していきたい」と説明する。法案がまずリサイクルの主体を発電事業者としたのも、コスト低減という理由が大きい。

石坂産業も法案を歓迎する。制度化によって回収量が増加・安定すればリサイクルコストの低減を期待でき、新たな設備投資や技術開発も進めやすくなるからだ。

◾️課題3:回収網をどう構築するか
◾️エディオンは家電回収のネットワークを活用
◾️目標設定とロードマップ策定を

有料会員限定コンテンツ

こちらのコンテンツをご覧いただくには

有料会員登録が必要です。

S.Nagahama

長濱 慎(オルタナ副編集長)

都市ガス業界のPR誌で約10年、メイン記者として活動。2022年オルタナ編集部に。環境、エネルギー、人権、SDGsなど、取材ジャンルを広げてサステナブルな社会の実現に向けた情報発信を行う。プライベートでは日本の刑事司法に関心を持ち、冤罪事件の支援活動に取り組む。

執筆記事一覧

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。