地雷原だった土地を活用してハーブを栽培し入浴剤などを生産しているクルクメールの篠田ちひろさんも、かものはしから情報をもらいながら、「貧しい人で、いい人はいないか」と声をかけながら採用する人を探すのだという。篠田さんは学生時代、アフガニスタンに学校を建てるボランティア団体に所属したが、挫折。「寄付に頼らず、資金を稼げる活動を」と会社を立ち上げた典型的な社会起業家だけに「カンボジアの人たちも、支援してもらうのが当たり前では困る。稼ぐことで自信を持ってほしい。この国を変えるのはカンボジア人自身なのだから」。田舎に行くほど雇用の機会が少ないので、工房を田舎に移すことも検討中だ。

ニューヨークのファッション界やパリコレでも製品が高く評価されたクメール伝統織物研究所(IKTT) の森本喜久男さんは、内戦で傷ついた森を再生、「伝統の森」という村まで作ってしまった。良い布をつくるためには良い土が必要、というのが森本さんの持論。良い土地があれば良い桑がなり、元気な蚕が育ち良質の生糸が取れるというわけである。伝統の森で廃れていた黄金の繭が復活、技術者も移り住んできた。何もなかったところに今40家族150人が暮らす。村づくりは人づくりでもある。ここでも土地なし農民、障がい者、孤児、シングルマザーを優先的に雇っている。

IKTT の糸はまっすぐではなく波打っている。「繭を手で引くリズムでそうなる。お母さんが子どもを横に置きながら安心して織った布。世界最先端のものづくりです」と森本さん。

カンボジアは確かに貧しい。そのために日本の社会起業家が入っているのだが、彼らは一様にこの国を愛しているように見えた。篠田さんのこんな言葉が印象に残った。

「ここに来るまでに20カ国を旅して回った。カンボジアの人たちは、いつも笑顔でとても幸せそうな顔をしている。それが不思議で、この国から学ぶこともあるのではないか、そう思いここにやって来たんです」。貧しいが豊かな国なのかもしれない。

【はらだ・かつひろ】日本経済新聞社ではサンパウロ、ニューヨーク両特派員。国連、NGO、NPO、社会起業家のほか、CSR、BOP ビジネスなどを担当。日本新聞協会賞受賞。2010 年明治学院大学教授に就任。オルタナ・CSR マンスリー編集長。著書は『CSR優良企業への挑戦』『ボーダレス化するCSR』など。

(この記事は株式会社オルタナが発行する「CSRmonthly」第13号(2013年10月7日発行)」から転載しました)

原田 勝広氏の連載は毎月発行のCSR担当者向けのニュースレター「CSRmonthly」でお読みいただけます。詳しくはこちら

1 2