記事のポイント
- ESG関連の取り組みを公にしないグリーンハッシングを行う企業が増えている
- グリーンウォッシュと批判されることやイメージダウンを恐れている
- グリーンハッシングの原因とリスクについて考察した
グリーンウォッシュによる批判やイメージダウンを恐れて、自社の取り組みを公にしない「グリーンハッシング」を行う企業が増えている。企業がグリーンハッシングを行う原因とそのリスクについて考察した。(サステナビリティ・プランナー=伊藤 恵)
グリーンハッシングとは、「静かにする」という意味の英語「hush」を合わせた言葉だ。企業がグリーンウォッシュに対する批判を回避するために、気候変動や環境への取り組みについて公表を控えることを指す。企業の環境活動に対する世の中の視線が厳しくなってきたことを受けて、グリーンハッシングを選択する企業は増えてきた。
■あえて沈黙を選択する企業も
ESG関連の取り組みに関する報告に対し、グリーンウォッシュと批判されることへの恐れが、グリーンハッシングを行う大きな理由だ。自社が目標を掲げたとしても、それを達成できなかった場合の批判も恐れており、目標を立てて行動しているにも関わらず公にすることをためらう企業も存在している。
実際、国内外でグリーンウォッシュに関する規制は年々厳しさを増す。EUでは、実質を伴わない環境訴求を禁止する指令案が正式に採択され、グリーンウォッシュになるマーケティングは制限されている。
独立した第三者機関による検証がないものを謳うことは原則禁止だ。実証できない、「環境に優しい」「エコロジカル」「グリーン」「エネルギー効率の良い」といった環境訴求の使用は不可だ。
日本でも、消費者庁が根拠のない「生分解性」を謳う製品について、行政処分を行うなど、グリーンウォッシュへの対応は厳しさを増す。
ネットゼロ(温室効果ガス排出量実質ゼロ)を目指す企業は増えており、その多くが科学的根拠に基づく排出量削減目標を掲げる。
それにもかかわらず、目標達成のための詳細なマイルストーンや取り組みを公表していない企業もある。ネットゼロを掲げた企業約1200社を対象にした調査※によると、約4分の1がその目標を外部に公表しない予定だと答えた。※サウスポール社(2022年)
■グリーンハッシングはブランド毀損のリスク
企業がグリーンハッシングを選択することで考えられるリスクとして、まず挙げられるのが財務上のリスクだ。企業が環境活動を公表しないと、投資家や消費者は必要な情報を得ることができず、環境に配慮した投資や購入をすることが難しくなるだろう。
もう一つ考えられるのが、ブランド毀損のリスクだ。グリーンハッシングをすることで、企業の透明性を損ない、長期的には信頼性やブランド価値をも低下させる可能性がある。
環境問題への取り組みを公表しないグリーンハッシングという課題にどう向き合えばいいのだろうか。企業は、正確な情報を投資家や消費者に提供する必要がある一方で、自社の取り組みを誇張して過剰にアピールしない意識も求められる。
もし達成できなかった場合は、限界として正直に情報共有する誠実さも持ちながら、持続可能なビジネスを進めていくことが重要だ。