奴隷状態の労働者、イタリア農村で

ディオールの下請け事業者2社が人権侵害をしていたとして7月、ミラノ裁判所はディオールを1年間司法管理下に置く判決を下した。ミラノ郊外の中国資本の下請け工場を査察し、不法入国の労働者の長時間労働や危険な労働環境を指摘した。取引価格の低さも問題視した。

同月にイタリアの農場でインド人労働者が「奴隷労働」状態にあったとの報道もあった。労働者らはインドから人身売買され、パスポートを取り上げられ宿舎に閉じ込められて労働を強いられたという。

実はこれらは珍しくはない。イタリアでは、農場の季節労働を外国人に頼るケースが多い。20万人の農業労働者や50万人の非正規移民が、人身売買や搾取労働の危険にさらされていると米国の人身取引報告書は指摘している。

イタリアは世界の皮革製品製造の約半分のシェアを占める。日本のトマト加工品輸入トップもイタリアだが、両産品とも同国で移民労働者の搾取が指摘されている。

サプライチェーンの人権リスクでは新興国・開発途上国に主眼が置かれるが、先進国も外国人労働者の人権対応で注視が必要だ。

shiozaki

潮崎 真惟子(認定NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパン事務局長)

デロイト、オウルズコンサルティングにて企業・政府・NPOに対する事業戦略やサステナビリティ分野のコンサルティングや人権デュー・ディリジェンス事業に従事し、2021年より現職。「児童労働白書2020」執筆

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