キユーピー、2030年までに「ケージフリー卵」の割合20%へ

記事のポイント


  1. キユーピーは30年までにケージフリー卵の調達割合を20%に引き上げる
  2. 鶏を狭い檻に入れるケージ飼育は、採卵鶏にストレスを与える
  3. 日本のケージフリー飼育の割合は1%だが、欧州や米国は50%を超えた

キユーピーはこのほど、2030年までにキユーピーマヨネーズに使う卵の20%をケージフリーで飼育した鶏から調達すると公表した。鶏を狭い檻に入れるケージ飼育は、採卵鶏にストレスを与えることに加えて、骨折や脱臼の原因になっていた。日本のケージフリー飼育の割合は1%だが、同社は今後10年間で5%に引き上げることを狙う。(オルタナ副編集長=池田 真隆)

日本のケージフリー飼育の割合はわずか「1%」

キユーピーグループは、「良い商品は良い原料からしか生まれない」という信念を掲げ、アニマルウェルフェア(動物福祉)の基本原則にも賛同を表明している。基本原則は「5つの自由」と呼ばれるものだ。その5つは、「飢えと渇きからの自由」「不快からの自由」「痛み・傷害・病気からの自由」「恐怖や抑圧からの自由」「正常な行動を表現する自由」――がある。

ケージフリー卵の調達量を増やす取り組みもこうした考えの一環だ。同社は今年5月末、グローバルで製造販売するキユーピーマヨネーズについて、ケージフリーの割合を、現在の3%から2027年までに10%に引き上げると公表していた。今回の新たな発表で、キユーピーマヨネーズで使う卵の20%の量を、ケージフリー卵で調達することを発表した。

こうした取り組みを通じて、今後10年間で日本におけるケージフリー飼育の割合を現在の1%から5%に引き上げることを狙う。

同社はケージフリー卵の調達が難しい地域に関しては、ケージフリー卵の認証クレジットの活用も検討する。

動物保護団体から「称讃の声」相次ぐ

キユーピーが年間で調達する卵の量は、日本の年間生産量の10%に相当する。世界的にも有数の卵の調達量を誇る。そんな同社がケージフリーの調達割合を引き上げたことの社会的インパクトは大きい。

動物保護団体からの称讃の声が相次ぐ。その一人が、認定NPO法人アニマルライツセンターの岡田千尋・代表理事だ。岡田氏は、ケージフリーへの移行について、2016年からキユーピーと対話を行ってきた。

今回の同社の公表について、岡田氏は、「厳しい日本市場においても、キユーピーがケージフリーに積極的に取り組んでくれたことを大変嬉しく思う。今回の決定は、鶏をケージに閉じ込めない未来への重要な一歩になる。キユーピーからマヨネーズや卵製品を調達する日本中の食品会社が、ケージフリーへの移行を加速させることを願っている」と話した。

欧州や米国では、ケージフリーの割合は50%超に

日本では採用鶏の99%をケージで飼育しているが、ケージの平均面積は一羽当りアイパッド一枚分に相当する。動きが制限された環境では、ケージに足が引っかかり、骨折などの原因になっていた。

近年はアニマルウェルフェア(動物愛護)の観点から、ケージフリーへの移行が加速する。ユニリーバやネスレ、ヒルトン、マリオットグループなどのグローバル企業はすでにケージ飼育を止めて、平飼いに切り替えた。

欧州や米国では、ケージフリーの割合は50%を超えた。世界のケージ飼育の鶏の60%以上がアジアに集中するが、着実にケージフリーへの移行は進む。インドは22%、インドネシア12%に増えた。

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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