[CSR] 福島の農家の思い、「氷結 和梨」に込めて――キリン、CSVへの取り組み

キリンビールは11月4日、福島県産の梨を使用した缶チューハイ「キリン 氷結和梨(期間限定)」を発売した。グループをあげて「復興応援キリン絆プロジェクト」を展開する東北の地で、福島の「氷結和梨」はキリンが掲げるCSV(共有価値の創造)の代表的事例に育ちつつある。社会的課題の解決と企業の持続的な成長を両立させる取り組みの細部を追った。(オルタナ副編集長=吉田 広子)

福島の梨農家の皆さん。梅津さん(中央)は高校卒業後、祖父母から引き継いだ梨畑で梨の栽培に携わって4年目
福島の梨農家の皆さん。梅津さん(中央)は高校卒業後、祖父母から引き継いだ梨畑で梨の栽培に携わって4年目

■「氷結」で地域を元気に

開けた瞬間、みずみずしく芳醇な梨の香りが広がる。

「初めて『氷結 和梨』を味わったとき、飲みやすくておいしかった。自分たちが育てた梨が加工され、全国に広まっていくのはとてもうれしい」

祖母と梨を生産する福島市の梅津晃志さん(22)は、発売当初を振り返る。キリンビールは2013年、復興支援の一環として、福島県産梨を使用した「氷結 和梨」を期間限定で全国的に売り出した。11月5日に販売を開始したところ支持が広がり、年内に予定の出荷量21万ケースを出荷し終えた。今年は7割増の37万ケースの出荷を予定している。これに伴い、梨の使用量(果汁ベース)も約26トンから約46トンと大幅に増加する。

梅津さんは、「品質に問題がなくても、少し傷が付くなど生食用としては出荷が難しい梨も、加工品の原料として出荷できるのはありがたい」と話す。

もともと「氷結」は、定番の「シチリア産レモン」「グレープフルーツ」「青ウメ」に加え、期間限定のフレーバーを年間10種類以上発売している。

徳島県産すだちと大分県産かぼすを使った「早摘み すだち&かぼす」や、宮崎県産の日向夏を使用した「ストロング 宮崎産日向夏」など、各地域の美味しい果実と旬にこだわった期間限定商品が好評だ。生産農家が試飲をするなど、商品開発にかかわってもらうこともある。

「氷結 和梨」は、キリンビールマーケティングの植木宏前社長が、かねてより面識のあった佐藤雄平・福島県知事の復興にかける意気込みに打たれ、商品を通じて何らかの支援ができないかと社内に促したことから始まっている。

キリンビールのマーケティング部で「氷結」を担当する平間政人さん
キリンビールのマーケティング部で「氷結」を担当する平間政人さん

東北では震災以前から、農業が抱える課題として、高齢化や人手不足が指摘されていた。福島の場合、震災を機に出荷制限が加わった。日本銀行福島支店の調査によると、2012年10月の福島県産和梨の卸値は、全国平均に比べ4割低かった(2013年5月発表)。

キリンビールのマーケティング部で「氷結」を担当する平間政人さんは、「みずみずしくすっきりした福島産の梨が氷結にぴったりだった。地域のおいしい食材を使い、『氷結ブランド』で地域を元気にしていきたい」と力を込める。

放射性物質の検査体制も厳格だ。原料については、行政の分析結果、サプライヤーの分析結果をモニタリングし、さらに独自に分析することで、安全な調達を行っている。その上で、最終商品についても独自に分析を行うことで安全の確認をする。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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