昨今、6次産業化の議論がされるが、まずは、生産力強化を前提に考える必要がある。例えば、ニュージーランドのゼスプリは、加工は一切せず、生産管理とブランド管理の徹底だけでキウイでは世界トップの企業となった。

企業経営であれば当然と考えられる取り組みを実践するだけでも、生産性が飛躍的に高まるとともに労働環境も劇的に改善し、魅力ある産業に変身する。そのためにも、まずは、農林水産業を家業レベルから事業レベルに引き上げ、就労環境を整え、生産性と所得を高めることで魅力的な産業へと転換することが必要だ。

現状は課題だらけの産業だが、課題の多くは克服可能であり、無限のチャンスが広がっていることも事実だ。農林水産業が抱えている課題は、業界固有の問題ではなく、むしろ、中小企業が共通に抱える課題でもある。そのなかでも、特に、家族を守り生計を立てるという発想から抜け出し、地域を支えるリーダーとして、魅力ある産業づくりを行う経営者へと育成することが急務の課題である。キリン株式会社が震災復興支援の一環として取り組んでいる「東北復興・農業トレーニングセンター」は、それを具体的に実践している。

企業がCSR活動として支援できることは多々あるはずだ。単に寄付をしたり、物理的なものの提供だけではない。

経営ノウハウを活かし農林水産業の担い手の人材を育成することは、産業力を高め、雇用を創出し経済活性化にもつながる。また同時に、未成熟な産業の労働環境の改善に寄与することは人権問題への取り組みの一つでもある。我が国が足元で抱えている社会課題を認識し、企業がこれまで培ってきた経営ノウハウや人的資源をもとに課題解決のための人材を育成するというソフト面からの支援はCSVにもつながる。

【おおくぼ・かずたか】新日本有限責任監査法人シニアパートナー(公認会計士)。新日本サステナビリティ株式会社常務取締役。慶応義塾大学法学部卒業。教員の資質向上・教育制度あり方検討会議委員(長野県)。大阪府特別参与。京丹後市専門委員(政策企画委員)。福澤諭吉記念文明塾アドバイザー(慶應義塾大学)。公的研究費の適正な管理・監査に関する有識者会議委員。京都大学・早稲田大学等の非常勤講師。公共サービス改革分科会委員(内閣府)ほか。

(この記事は株式会社オルタナが発行する「CSRmonthly」第14号(2013年11月5日発行)」から転載しました)

大久保 和孝氏の連載は毎月発行のCSR担当者向けのニュースレター「CSRmonthly」でお読みいただけます。詳しくはこちら

1 2