独の「リフード」ビジネス、残飯をエネルギーに

国内メルヒンにあるReFood 社のバイオガス施設(写真提供ReFood)
国内メルヒンにあるReFood 社のバイオガス施設(写真提供ReFood)

レストランの残飯、学校給食の残り、スーパーの生鮮食品の売れ残り――。1日の終わりに捨てられる食品の量は、日本国内だけでも年間1800万トン、食料消費量全体の2割と推定されている。材料費だけでなく、輸送費や調理に使う燃料費も考慮すると大変な無駄が発生しているが、先進国ではこれを豊かな生活の必要悪として看過してきた。このジレンマに終止符を打ち、捨てられた食品を原料にバイオガスを精製、自然エネルギーとして販売するビジネスで急成長している企業がドイツにある。その名もずばり「ReFood(リフード)」、つまり「食品の再利用」という社名の会社だ。(独デュッセルドルフ=田中聖香)

リフードのシステムは単純明快だ。全国各地の拠点に専用車を配備し、域内のレストラン、ホテル、スーパー、病院、学校などを回って残飯や売れ残りの食品を集める。これを拠点に持ち帰り、自社施設で粉砕、脱脂、低温殺菌してバイオマス化し、メタンガスに精製して熱電併給プラントの燃料にする。

低温殺菌設備。廃棄食品を粉砕、低温殺菌した後、脱脂、消化、脱硫のプロセスをたどる(写真提供ReFood)
低温殺菌設備。廃棄食品を粉砕、低温殺菌した後、脱脂、消化、脱硫のプロセスをたどる(写真提供ReFood)

カーボンニュートラルな電力が得られるだけでなく、残留物として発生したリンやニトロゲンなどは有機肥料になる。使用済みの揚げ油は、別途精製してバイオディーゼルの原料に作り替える。こうしてできたリフード社の「製品」は、電力会社、農業生産者、石油産業などの顧客に「100%クリーンな」製品として販売されていく。

同社の母体は1980年代に形成され、各地で同様の業務を展開していた企業をグループ化しながら規模を拡大していった。現在ドイツ全土に18拠点を構え、従業員数800人、専用車の数は400台に上る。地域密着型の小規模企業が多いこの業界では、国内最大手だ。

顧客数は60000社を超え、年間50万トンの食品を回収、再生した電力や熱は50000世帯にエネルギーを供給できる量に匹敵する。

リフード社広報担当のニコラス・ボーイ氏は「当社は宣伝活動をほとんどしていませんが、顧客の口コミや、路上で回収車を見かけた人が連絡してくる形で、自然に事業を拡大してきました」と話す。

ドイツではこれまで、賞味期限切れでも消費できる食品ならホームレス対象のフードバンクなどに提供されてきた。しかし、このルートで活用できる量は限られている。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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