記事のポイント
- トヨタ自動車の全方位戦略はネット・ゼロを目指す世界の潮流と合致するのか
- 第二次トランプ政権に環境規制の一部緩和を期待する自動車企業もある
- だが、世界はすでに脱炭素に向けて大きく舵を切っている
トヨタ自動車は全方位戦略を掲げ、電気(EV)、水素(FCV)、ガソリン、ハイブリッドなど多様な自動車の開発にリソースを割いている。この戦略は、脱炭素の世界的な潮流に合致しているのか。国際環境NGOグリーンピース・ジャパンの塩畑真里子・気候変動・エネルギー担当に寄稿してもらった。
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昨年10月下旬、トヨタ自動車の豊田章男会長が韓国を訪問、現代自動車の鄭義宣会長とともに自動車の振興イベントに参加した。日経新聞は、「両社は水素で走る燃料電池車(FCV)に力を入れている
が、電気自動車(EV)が減速し、環境車の選択肢としてFCVが見直されている」と報じた(注1)。
トヨタは、9月に独BMWとFCVでの全面提携を発表したが、その時も国内では「EVが減速しているからFCVが必要」という論調が目立った。
EV専業で世界を席巻しているテスラやBYDのような企業がある一方、レガシーカンパニーがどのような戦略を打ち出していくかが注目されるのは当然だ。しかし、EV充電施設に比べて水素の充填設備は圧倒的に少ない中、FCVが脱炭素の突破口になるという可能性はあるのだろうか。
トヨタは1990年代に売り出したプリウスが大ヒット、「グリーン」のイメージを固めることに大成功した。その後、プリウスはモデルチェンジを経て今は第5世代に至る。
同社は、2014年に世界初の市販FCVミライを発売、その後、最初のEVを市場に出したのは2022年。プリウス販売から実に25年が過ぎていた。
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