『真実の瞬間』が指していた「真実」とは何か。パリ、ロンドンで考えました。[三浦 光仁]

旅行者が最初にその街の印象を強く受け取るのは、タクシーに乗った時ではないでしょうか。その街に生きる生身の人間に触れ合う瞬間です。インフォーメーションでの業務的おもてなし態度とは異なり、お金の受け渡しが行われるサービス業との初めての接触です。

ロンドンでオースチンのタクシーに乗るたびにその職業のプロフェッショナルな気持ちよさを感じ取ることができます。4人がゆったり乗れるスペースに脚を伸ばして寛げるのもうれしいし、余計な会話をすることもなく目的地へ最短距離で走り出すことに意欲を燃やす職業的意識が感じられます。

今では黒塗りの車体が減り、コマーシャルが書かれているものが増えたのが少し残念です。とは言え、昔ながらの黒い車体を選んで乗れるほど町にはたくさんのタクシーが走っていることもうれしい限りです。

帰国して、今回のパリ・ロンドン出張を振り返ると一つの発見がありました。

わずか2週間余りの出張だとしても、旅をしていて触れ合う人の印象がその国の思い出に直結します。

駅の売店での短い会話、タクシーの運転手さんとの会話、ホテルのフロントでの会話。そんな、旅では当たり前の会話の中に潜む人の想いや、声のトーンなどで、その街の、その国の印象が決まってしまう面白さがあります。

仕事で出会う人たちは「名前」があり、「名前」で呼ぶので、個人としての印象です。ところがタクシーやホテル、レストランやカフェの人々は基本「名前」ではなく、その街の人として、またはその国の人として接するので、街や国の思い出と直結してしまうのでしょう。

帰国し、空港から都内に向かうリムジンバスの運転手さんのアナウンスを聞いていて、この国(日本)の人は何と細やかな神経を持っていて、お客様のことを真剣に考えているのだろうと感動してしまいました。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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