記事のポイント
- 日本国内の食品ロス量は減り続け、2022年度は過去最少に
- 日本は2030年度までに食品ロス量の半減を目標に掲げる
- 感情に訴える「涙目シール」などユニークな食品ロス対策を紹介する
日本国内の食品ロス量は年々減り続け、2022年度は「過去最少」を記録した。日本は食品リサイクル法に基づき、食品関連事業者が排出する食品ロス量を2000年度比で2030年度までに半減する目標を掲げる。国内外のユニークな食品ロス対策を紹介する。(サステナビリティ・プランナー=伊藤 恵)

WWFと英国テスコが2021年に発表した報告書によると、世界では年間で25億トンの食品が廃棄されていることが判明した。この数値は世界で生産された食品の40%相当だ。
一方、日本国内の状況を見ると、農林水産省が発表した令和4年度(2022年度)の食品ロス量は472万トンで、過去最少を記録した。日本は食品リサイクル法に基づき、食品関連事業者が排出する食品ロスを2000年度比で2030年度までに半減する目標を掲げる。
事業系の食品ロスでは、令和4年度にこの目標が達成された。近年増えている食品ロスへのさまざまな取り組みが、消費者の関心を高め削減の一因になっているといえるだろう。
■消費者心理に訴えるファミマの「涙目シール」
ファミリーマートは食品ロス削減に向け、値下げ商品に貼るシールのデザインを変更。涙目の表情をしたキャラクターのイラストに、「たすけてください」というメッセージをつけた。

消費者の感情に訴え、購入率を向上させる仕組みだ。実証実験では値下げ商品の購入率が5ポイント向上した。涙目キャラクター付きのシールは2025年春から全国展開を予定していて、店舗での食品廃棄を年間3000トン削減する効果が期待されている。
■ショッピングで社会貢献を「気軽」に
「KURADASHI.jp」は、食品メーカーから提供された商品をお得な価格で消費者に販売するフードシェアリングプラットフォームだ。社会貢献意識の高い消費者が利用することで、食品ロス削減と社会貢献を同時に実現する仕組みが広がりを見せている。
賞味期限間近や規格外で廃棄される商品を購入すると、購入金額の数パーセントが環境保護や動物保護など多岐に渡る活動への支援金となるシステムだ。
■廃棄食材で高品質な食体験を提供へ
オランダで誕生したレストラン「Instock」は、廃棄予定の食材を活用した料理を提供する革新的な取り組みを行っていた。地域のスーパーマーケットや生産者から余剰食材を調達し、一流シェフが調理することで、食品ロスの解決とともに高品質な食体験を提供してきた。
その後、彼らは食材の流通事業「InstockMarket」を立ち上げ、レストランから卸売業者へと転換した。2023年にはフードレスキューセンターを新設し、救出する食材量を2倍に拡大した。
さらに、市内ホテルや学校との連携を強化し、食品廃棄ゼロを目指す活動に取り組んでいる。Instockは2024年に10周年を迎え、これまでに470万キログラムのCO2削減を達成した。
Bコープ認証も取得し、オランダ国内のみならずベルギーでもグローバルに事業を展開している。これらの活動は、単なる食品ロス削減にとどまらず、社会全体で持続可能な未来を構築するための重要なモデルとなっている。
食品ロスは環境や社会に大きな影響を及ぼす課題だが、国内外での多様な取り組みは新たな可能性を示している。日本では政策や企業の工夫が実を結びつつあり、世界でもクリエイティブな解決策が進化している。
私たち一人ひとりがこの問題に目を向け、行動を起こすことで、持続可能な未来を手繰り寄せることができるだろう。食品ロス削減への挑戦は、今を生きる私たち全員の責務である。