記事のポイント
- カカオ価格が高騰するなか、英企業がソラマメ原料のチョコを開発した
- ソラマメ製チョコはカカオ原料に比べコスト・CO2排出量ともに90%削減する
- 昨年には独食品企業と提携、今年中にローンチし世界の食品企業へ提供する
■世界のソーシャルビジネス
近年、カカオの価格は高騰続きで、史上最高記録も出た。気候変動による凶作が原因だ。2033年までに供給が25%減少する可能性があるといわれるカカオの代用として、英国のヌココ社はソラマメを採用。独自の発酵技術を用いて、「ビーン・トゥ・バー」チョコレート代替品を作ることに成功した。(クローディアー真理)

米国の市場調査会社、ジオンマーケットリサーチの調査報告書によれば、世界のチョコレート市場の規模は2020年に1360億米ドル(約22兆円)で、2021年から2028年までの年平均成長率は約4.7%。2028年までに約1921億2000万米ドル(約300兆円)の収益を上げると予測される。
市場は拡大しているものの、気候変動の影響で主産地の西アフリカを中心に凶作に見舞われ、3年間の供給不足が続いている。そのため、一昨年にはカカオの価格が89%上昇。最終的に30万tが不足した昨年、価格は2倍に跳ね上がり、過去最高値を記録した。
その一方で、カカオのCO2排出量は全食品の中で5番目に多いという。カカオ生産者は需要に見合うよう生産しようと、新たな農地を開拓する。大規模な森林伐採を行い、CO2排出量はさらに増加する。
■今年中のローンチを目指す
カカオ不作真っただ中の2022年、チョコレートを人と地球のためによりサステナブルで健康的なものにすべく、3人のチョコレート産業関係者が立ち上げたのが、ヌココ社だ。カカオの伝統的な発酵技術を模倣した発酵法を開発し、カカオではなく、ソラマメを原料にチョコレートを作ることに成功した。

Photo by Sylwester Ficek/Pexel
創始者であり、共同最高経営責任者のロス・ニュートン氏によれば、ヌココ社が代替チョコレートの原料にソラマメを選んだのは、特に欧州を中心に世界中で栽培され、カカオ製のチョコレートより生産費を90%安く抑えられるからだそう。
ソラマメを採用すると、人にも地球にも多くの利点が生まれる。森林伐採の必要はなく、CO2排出量も90%削減。土壌の健康にも良い。チョコレートの味を維持しつつ、高タンパク質や豊富な繊維質、抗酸化物質といったソラマメが持つ栄養素も盛り込める。砂糖の使用量が40%抑えられているが、味にそん色はない。
同社の、新しい発酵技術は特許申請中だ。ほかのマメ類にも適用でき、将来、違うマメを原料に採用することも可能だという。
ヌココ社の狙いは、ソラマメ製チョコレートを世界の主要な食品会社に提供し、製品づくりに取り入れてもらうことだ。昨年9月、独の食品製造会社、ドーラー社と戦略的パートナーシップを結び、事業を拡大しており、今年中のローンチを目指す。ニュートン氏は、カカオ製よりサステナブルで、費用対効果が高く、天然の植物由来で健康的なソラマメ製チョコレートが世界中に出回れば、気候変動抑制に大きなプラスになると期待する。