記事のポイント
- アフリカで、CO2を排出しない電動バイクが広がり始めた
- ガーナ人起業家が、ガーナ初となる電動バイクの製造会社を興した
- アフリカの道路事情に合わせたタフな造りで、ユーザーにはギグワークで働く機会も与える
アフリカで電動バイクが広がり始めた。ガーナ初の自国製電動バイクを製造・販売するワフ・モビリティ社を創業したのは、ガーナ人起業家だ。アフリカの道路事情に合わせて設計し、ユーザーにはギグワークで働く機会も与える。ガーナ、トーゴのほか、ナイジェリアやザンビアでも事業を展開予定だ。(オルタナ副編集長=北村佳代子)

2024年EMYアフリカの「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」を受賞した
コロナ禍を機に食品や医薬品などの配送サービスはアフリカでも一気に拡大した。ストライツ・リサーチ社(インド)の予測では、アフリカのラストワンマイル配送市場は2022年以降、年平均成長率8.5%で拡大を続け、2030年の市場規模は23.5億ドル(約3500億円)を見込む。
ワフ・モビリティ社のヴァレリア・ラビ創業者は、ガーナで増え続ける配達ドライバーに、ガソリンバイクから同社の電動バイクへの乗り換えを促す。
ワフ社の電動バイクはタフな造りが特長だ。タイヤは太く、路面からの衝撃をより吸収できるようフロントとリアのサスペンションを補強し、オフロードの使用にも適している。
ペダルをこがずに加速・走行できるスロットル機能のほか、自宅で容易に充電・交換できるバッテリーを2つ搭載。航続距離は約140キロメートルだ。
ガソリン価格が高額なガーナでは、電動バイクに切り替えることで、ドライバーのコストを20分の1以下に抑えられるとラビ氏は言う。
年産5万台の生産能力の拡充を目指す。ガーナの首都アクラでのユーザー数は、2024年の約300人から2025年には2000人へと拡大させる見込みだ。

「ワフ(WAHU)」はガーナ北部のダグバニ語で「馬」を意味する
■母国の社会課題解決に奔走
ガーナ人の両親の下、英国で生まれ育ったラビ氏は、母国ガーナに移り住んで以来、女性主導の中小企業の支援や、衛生かつ安価なトイレを低所得者向けに提供するなど、同国の課題解決に資する事業を複数興してきた。
電動バイク事業も、「利用できる交通手段は高いし、信頼性が低い」と近所の人たちが漏らす不平不満から着想した。
コロナ禍でギグ・エコノミーが急成長した同国で、モビリティーのソリューションを提供することで、農村部の女性が収入を得る機会をもたらしたいとも考えた。
■ギグワークで収入機会を
同社は今、同国内の大手デリバリーサービスの「ボルト」や「グローボ」と提携している。新たに配達ドライバーの仕事を始めたいワフ社のユーザーに、これら配達サービスの仕事を安定的に提供するためだ。
「アフリカの持続可能なフリート」を目指す彼女の構想は、配送サービスにとどまらない。ワフ社の電動バイクで産科医の行動範囲を広げ、医療アクセスの改善にもつなげていく予定だ。
将来的には電動バイクの製造も100%、太陽光発電へと切り替える。環境・経済・社会面で大きなインパクトをもたらしそうだ。