齊藤 紀子(企業と社会フォーラム(JFBS)事務局長)
前回に引き続き、JFBS 2012年度(2012年9月~2013年8月)助成対象研究として採択された研究について紹介致します。今回は、4月2日開催の研究会における報告「ソーシャル・コンシューマーの消費意思決定プロセスの解明」の内容を中心に、日本のソーシャル・コンシューマーの現状を紹介致します(報告者:千葉商科大学商経学部・大平修司准教授、早稲田大学商学学術院助手・スタニスロスキー・スミレ氏、高千穂大学商学部・薗部靖史准教授)。
最近、企業はCSR 活動の一つの手段として多くのソーシャル・プロダクト(社会的課題の解決に繋がる製品・サービス)を販売するようになり、特に東日本大震災以降は消費者がソーシャル・プロダクトを目にする機会が増えました。
こうした中、大平氏らの研究チームは、日本社会においても寄付つき商品などの購買を通じて被災地支援に貢献する、というような「ソーシャル・コンシューマー」(消費を通じて社会的課題の解決を図る個人)が増えてきたことに注目しています。
そして、こうした復興支援に関する消費を含めた動きは、従来のエシカル・コンシューマーに関する研究(欧州中心)、グリーン・コンシューマーに関する研究(米国中心)のいずれでも捉えきれないことから、広く社会的課題と消費者のかかわりに対象を広げて研究を行っています。
これまでに、インターネット調査のデータを基にして、日本のソーシャル・コンシューマーの割合は25.4%程度であることを示し、その特徴を(年齢、性別、結婚しているかどうか、子どもの有無、社会的課題への関心度合い等の指標を用いて)整理してきました(詳細はWorking Paper「消費を通じた社会的課題解決」 http://j-fbs.jp/publications.html 参照)。この成果をもとに、ソーシャル・コンシューマーの消費意思決定プロセスを明らかにするための研究を進めています。
過去の過去の行動と消費意思決定プロセスのかかわり今回の報告では、東日本大震災後にとった行動(寄付・募金、ボランティアという市民活動と、環境配慮型商品、寄付つき商品、応援消費という消費行動)から消費者を階層化し、その階層ごとの意思決定プロセスの違いが説明されました。
具体的には、「環境配慮型商品が好き」などの態度、「周囲は私が環境配慮型商品を買うべきだと思っている」などの主観的規範、「それを買えば環境問題の解決につながる」などの有効性評価、「環境配慮型商品を買う機会がたくさんある」などの入手可能性評価が、「環境配慮型商品を買う/買うつもりはない」といった意図にどのような影響を及ぼしているのか、という問いについての実証分析結果が説明されました。