根拠なきサステナブル: 「安易な広告はグリーンウォッシュ」

記事のポイント


  1. 安易に「サステナブル」「カーボンニュートラル」をうたうCMが増加中だ
  2. 欧州でこのようなCMは「グリーンウォッシュ」だとして、訴追の対象にもなる
  3. 環境問題に詳しい大学教授や弁護士ら専門家が指摘する

気候変動への対策が待ったなしで企業の責任も高まるなか、日本でも「根拠なきサステナブル」「安易なカーボンニュートラル」「ゼロエミッション火力」を掲げるCMが増えている。しかし、こうした環境主張には確かな根拠があるのだろうか。環境問題に詳しい大学教授や弁護士ら専門家が問題点を指摘する。(オルタナ編集部)

東京ガスは「東京ガスとやる?カーボンニュートラル」をキャッチフレーズに、お笑い芸人の令和ロマンを起用した新たなCMを開始した
東京ガスは2025年1月、「東京ガスとやる?カーボンニュートラル」をキャッチフレーズに、お笑いコンビ・令和ロマンを起用した新たなCMを開始した(同社リリースから)

「グリーンウォッシュ/グリーンウォッシング」とは、英語で「ごまかす」「欠点を隠して良く見せる」という意味の「ホワイトウォッシュ」と、「グリーン」(環境)を組み合わせた造語だ。

グリーンウォッシュの問題点は、消費者や投資家などが環境に配慮されていると思い込み、適切な選択肢を選べず、結果的に環境問題が深刻化してしまうことにある。アントニオ・グテーレス国連事務総長は2024年6月、気候変動対策の一環として、化石燃料業界の広告を禁止すべきだと訴えた。

各国では、グリーンウォッシュを取り締まるための法整備が進む。

例えば、欧州連合(EU)では、グリーンウォッシュを禁止する「EUグリーンクレーム(環境主張)指令案」が採択された。27年から順次、適用が開始する見込みだ。

これにより、客観的な根拠がないまま、「環境に優しい」「グリーン」「カーボンニュートラル」といった環境訴求を行うことができなくなる。カーボンオフセットによって、製品が環境に与える影響について、「中立的」「低減」「良い影響を与える」といった主張をすることも禁止する。

指令案の適用前ではあるものの、すでにグリーンウォッシュを巡る訴訟は相次いでいる。オランダの裁判所は24年3月、「サステナブルなフライト」と謳ったKLMオランダ航空の主張は違法との判決を下した。

このように、根拠なしに「サステナブル」をうたうことは優良誤認に当たるとの司法・行政判断が増えている。欧州委員会は24年4月、航空会社20社に対して、グリーンウォッシュに対する調査を開始した。

■ 人気のQuizKnockや令和ロマンを起用

一方、日本では、化石燃料事業を手掛ける企業がカーボンニュートラルをうたうCMが増えている。

JERAは2021年から、アンモニア混焼を「CO2が出ない火」「ゼロエミッション火力」とする宣伝を始めた。アンモニアの製造時や輸送時のCO2排出には言及していない。2024年からは、伊沢拓司さんが率いるQuizKnock(クイズノック)とのコラボレーションも展開する。

大阪ガスは2022年からカーボンニュートラルを実現する技術として、メタネーションを宣伝するCMを展開。メタネーションとは、水素とCO2からメタンを合成する技術だ。

東京ガスは2025年1月、「東京ガスとやる?カーボンニュートラル」をキャッチフレーズに、お笑いコンビ・令和ロマン(吉本興業)を起用した新たなCMを開始した。

関西電力は、ゼロカーボン化に向けた新技術を紹介するCMを展開している。

こうしたカーボンニュートラルをうたうCMに対する大学教授や弁護士など専門家の見解は総じて手厳しい。

(この続きは)
■「CO2を出さないゼロエミ火力を称することは詐欺に等しい」
■メタネーションの技術自体、商用化からほど遠い
■課題が多いのにあたかも達成できるとの主張はミスリーディング
■日本ではグリーンウォッシュに対するEUのような規制がない
■環境省が今年2月4日に「カーボンフットプリント表示ガイド」発表

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #脱炭素

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