記事のポイント
- 安易に「サステナブル」「カーボンニュートラル」をうたうCMが増加中だ
- 欧州でこのようなCMは「グリーンウォッシュ」だとして、訴追の対象にもなる
- 環境問題に詳しい大学教授や弁護士ら専門家が指摘する
気候変動への対策が待ったなしで企業の責任も高まるなか、日本でも「根拠なきサステナブル」「安易なカーボンニュートラル」「ゼロエミッション火力」を掲げるCMが増えている。しかし、こうした環境主張には確かな根拠があるのだろうか。環境問題に詳しい大学教授や弁護士ら専門家が問題点を指摘する。(オルタナ編集部)

「グリーンウォッシュ/グリーンウォッシング」とは、英語で「ごまかす」「欠点を隠して良く見せる」という意味の「ホワイトウォッシュ」と、「グリーン」(環境)を組み合わせた造語だ。
グリーンウォッシュの問題点は、消費者や投資家などが環境に配慮されていると思い込み、適切な選択肢を選べず、結果的に環境問題が深刻化してしまうことにある。アントニオ・グテーレス国連事務総長は2024年6月、気候変動対策の一環として、化石燃料業界の広告を禁止すべきだと訴えた。
各国では、グリーンウォッシュを取り締まるための法整備が進む。
例えば、欧州連合(EU)では、グリーンウォッシュを禁止する「EUグリーンクレーム(環境主張)指令案」が採択された。27年から順次、適用が開始する見込みだ。
これにより、客観的な根拠がないまま、「環境に優しい」「グリーン」「カーボンニュートラル」といった環境訴求を行うことができなくなる。カーボンオフセットによって、製品が環境に与える影響について、「中立的」「低減」「良い影響を与える」といった主張をすることも禁止する。
指令案の適用前ではあるものの、すでにグリーンウォッシュを巡る訴訟は相次いでいる。オランダの裁判所は24年3月、「サステナブルなフライト」と謳ったKLMオランダ航空の主張は違法との判決を下した。
このように、根拠なしに「サステナブル」をうたうことは優良誤認に当たるとの司法・行政判断が増えている。欧州委員会は24年4月、航空会社20社に対して、グリーンウォッシュに対する調査を開始した。
■ 人気のQuizKnockや令和ロマンを起用
一方、日本では、化石燃料事業を手掛ける企業がカーボンニュートラルをうたうCMが増えている。
JERAは2021年から、アンモニア混焼を「CO2が出ない火」「ゼロエミッション火力」とする宣伝を始めた。アンモニアの製造時や輸送時のCO2排出には言及していない。2024年からは、伊沢拓司さんが率いるQuizKnock(クイズノック)とのコラボレーションも展開する。
大阪ガスは2022年からカーボンニュートラルを実現する技術として、メタネーションを宣伝するCMを展開。メタネーションとは、水素とCO2からメタンを合成する技術だ。
東京ガスは2025年1月、「東京ガスとやる?カーボンニュートラル」をキャッチフレーズに、お笑いコンビ・令和ロマン(吉本興業)を起用した新たなCMを開始した。
関西電力は、ゼロカーボン化に向けた新技術を紹介するCMを展開している。
こうしたカーボンニュートラルをうたうCMに対する大学教授や弁護士など専門家の見解は総じて手厳しい。
(この続きは)
■「CO2を出さないゼロエミ火力を称することは詐欺に等しい」
■メタネーションの技術自体、商用化からほど遠い
■課題が多いのにあたかも達成できるとの主張はミスリーディング
■日本ではグリーンウォッシュに対するEUのような規制がない
■環境省が今年2月4日に「カーボンフットプリント表示ガイド」発表