CSV/シェアード・バリューをどう伝えるかは、企業のコミュニケーション戦略のもとに考えられるべきものです。
なお、既に行われているCSVは、「Created SharedValue」です。対外的にアピールするだけで、そこで留まっていると、新しい価値は創造されず、「Creating Shared Value」にはなりません。製品・サービス、バリューチェーン、クラスター/競争基盤の3 つのアプローチにより、共有価値を継続的に創造していくことが必要です。
バリューチェーンのCSV、クラスター/競争基盤のCSVは、様々な形態で実施することが可能です。例えば、「節電」も自社の事業プロセスにおいて、エネルギー利用やCO2 排出を削減しつつ、自社のコストを削減するバリューチェーンのCSV です。
■CSV創造のための議論を
一方で、過去における「プリウス」「マイクロファイナンス」などに代表される新しい市場を創り出すイノベーションもCSV(この場合は、製品・サービスのCSV)です。
改善活動のように地道にたくさんの活動を積み重ねるタイプのCSV/ シェアード・バリューもあれば、新興市場戦略の一環として行うCSV/シェアード・バリューもあり、会社を挙げて大きなイノベーションにチャレンジするCSV/シェアード・バリューもあります。すべての組織のすべての部門でCSV/シェアード・バリューを生み出すことが可能です。CSV/シェアード・バリューのフレームワークは、そうした活動を生み出すための視点を提供しています。
CSV/シェアード・バリューのフレームワークを用いて、どれだけ多くの価値を生み出すかが重要です。「今行っているどの活動がCSV/シェアード・バリューと言えるのか」と議論するのではなく、「できる限り多くのCSV/シェアード・バリューのアイデアを生み出し、それを実践していく」かが大事です。
【みずかみ・たけひこ】東京工業大学・大学院、ハーバード大学ケネディースクール卒業。旧運輸省航空局で、日米航空交渉、航空規制緩和などを担当した後、アーサー・D・リトルを経てクレアンに参画。CSR/CSV のコンサルティングを主業務とする。ブログ「CSV/ シェアード・バリュー経営論」共著『CSV 経営』(NTT 出版)
(この記事は、株式会社オルタナが2013年12月5日に発行した「CSRmonthly 第15号」から転載しました)