[映画評:うみ やま あひだ] 森から響くメッセージを受け止めた。 [三浦光仁]

伊勢神宮からシーンが変わって、見たことがある海岸線が現れたと思ったら気仙沼でした。エムズシステムは、「演奏家のいない演奏会」を全国各地で開催しています。

自社のスピーカーを使って上演する、あたかもステージの上に演奏家がいるようなリアリティ溢れる演奏会です。これの383回目をちょうど3日前に気仙沼で行ってきたところだったのです。スクリーンには、地元の人に案内されながら見た、海岸沿いの道からの景色が写っていました。

森と海は繋がっていて、その間に人が生きているとこの映画は語りかけているのだと思いますが、その絆を断ち切るような「防潮堤」の建設が始まっています。京大教授の田中克さんも、その海辺に座って私たちが本当に為すべきことを教えてくれます。

田中さんは「コンクリートの防潮堤の山、近代的な技術で自然を制御できるという過信を戒めなければ。自然への畏敬の念を取り戻さなければ」と話しています。

地元の方々も防波堤建設に懸念を示します。「人の命を守るためと言って防潮堤を建設しているのでしょうが、自然の力は人間の力を軽く超えてしまいます。力で防ぐのではなく、津波が来た時の避難の場所と仕方を準備すべきです」。

脳科学者の大橋力さんは「伊勢神宮の森は熱帯雨林とそっくり。驚くほどの超高周波が多い森です」と、森の特徴を説明します。

「熱帯雨林には耳では聞こえない超高周波が満ちているのですが、それはまさしく耳で感じるのではなく、身体で、皮膚で感じ取る事が分かってきました。しかもそれは心身の健康に非常の良い効果をもたらすのです」。音とは空気の振動ですから、耳で聞こえようが聞こえまいが、その空気は振動しているのです。

20Khz(キロヘルツ)以上の微細な振動は、耳ではなく皮膚で感じるようになります。振動数によって人は感覚センサーを使い分けているのです。振動数の順に、聴覚、触覚、視覚という具合です。「私たちが静かだと感じるところにも、森のオーケストラが自然の音を豊かに奏でているのです」 (大橋さん)

心に響く言葉が、この映画にはたくさん散りばめられています。美しいドキュメンタリー映画です。問題提起していると言うより、古より受け継いできた人と森との関係を、DNAの記憶の中から呼び覚ましてくれる、そんな映画です。ぜひご覧ください。

◆うみやまあひだ http://umiyamaaida.jp/

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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