■オルタナでは「自然エネルギー」と言っています
森: いきなり脱線するのですが、オルタナという雑誌は再生可能エネルギーという言葉は使わないようにしています。
鎌仲: どうしてですか。
森: まず、「再生可能」という言葉自体、分かりにくい。だって僕だって分からない。どうして再生可能なんだろう。
鎌仲: なるほどね。
森: このあいだTwitterで会話して、、初めて、あ、そういうことだったのだな、と分かったわけです。
鎌仲: 最初にRenewable Energyを再生可能エネルギーと訳したのは誰なんですか。
森: 誰でしょう、わからない。
鎌仲: でも他に日本語のいいのがあるかしらね。
森: では、オルタナはどうしてるかというと、自然エネルギーという言葉に統一してるんですね。それが一番なんか夢があって、言葉としても。同じような言葉では「新エネルギー」というのもあります。
鎌仲: 新エネルギーは国が決めてる言葉だから嫌だよね。
森: あれは官製用語で、しかも経産省の用語なんですよね。
鎌仲: しかも海洋エネルギーを新エネルギーと言っていない。
森: そう、定義の問題もあるしね。
鎌仲: 小水力を新エネルギーと言ってなかったり、そんな官僚言葉だから嫌だよね。
森: だから新エネという言葉はもちろん使わない。
鎌仲: では自然エネルギーですね。
森: 自然エネルギーという言葉の方がなんとなくみんな夢があるじゃないですか。
鎌仲: うん、まあシンプルでわかりやすくて良いよね。サ・イ・セ・イ・カ・ノ・ウ、などと言うよりも。
■なぜ日本で自然エネルギーが増えないのか
鎌仲: 映画の中でスウェーデンの波力発電所をやってる学者さんが、英語で言っています。Mother nature, it’s conversion for energyって。エネルギー転換をするのを「マザーネイチャー」、「マザーアース」がやってくれてるんだ、みたいな。その中でも波力がエネルギー効率もエネルギー密度も高いんだよね、という話なのです。
森: 日本では自然エネルギーが全体に占めるシェアが1.63%しかない。
鎌仲: 実質的にはもっと低いんじゃないでしょうか。
森: 実質的にというと。
鎌仲: 発電とかそういう電気エネルギーだけだと1.6%かもしれないけどね。
森: 発電量としてはね。これは要するに法律で決まってるわけです。その目標値自体が1.63%だからそれ以上にならない。それを決めたのがRPS法ですよね。
鎌仲: そうですよ。知ってますよ。そのRPS法が実は一瞬ね、もっといい方向にいきそうだったんだけれども、やはり引き戻されて、なし崩し法になってしまったっというか。
森: そうですね。かたやスウェーデンなどヨーロッパではだいたい2030年に20―50%位の目標値を出しているわけです。
鎌仲: ヨーロッパ全体がそうですよね。
森: そうですね。欧州に比べて日本ではまだまだ意識が足りない。政治もまだ追いついてないし、経産省とか資源エネルギー庁など行政もまだまだです。
鎌仲: 映画の中で私も飯田哲也さん(NPO法人環境エネルギー政策研究所長)に、なぜ自然エネルギーが日本に増えないんですかと聞きました。世界はそっちを向いているのに日本だけが原発をね、ガシガシやっていく。
森: その時飯田さんはなんて答えましたか。
鎌仲: 飯田さんは、電気を独占したい人たちと、原子力ネットワークが部分的には重なるような大きな力の輪を描いて、出てくる新しい小規模分散型の自然エネルギーを潰すと。ぐっと押さえつけ続けているので、その壁がどうしようもない。エネルギーを独占され、原子力エネルギーにあまりにも多くの国家予算が投入され続けていることによって、いろんな芽が出てきて育とうとしても育たない。
森: そうですね。僕も飯田さんには何回かインタビューしたことがあり、「これだけ世界的に風力、太陽光といわれている中で、どうして日本の電力業界の人はそこまで遠ざけているのか」と聞きました。その答えとして飯田さんが言った中で一つ面白い言葉があありました。要するに電力業界は、いわば日本のエスタブリッシュメントなんですよ。
鎌仲: うん。
森: 彼らはネクタイ締めて毎日通勤しているような人たちで、一方で、乱暴な言い方かもしれないけど、自然エネルギーというのは元々自然保護運動の人がいたり、有機をやってる人がいたりと、どちらかというと左翼的、ヒッピーであり、そういう相互不信が特に日本ではまだ凝り固まっている。ネクタイ族にとって、自然エネルギーの連中はどうも胡散臭いくさいと思っているようだ、ということを飯田さんが言っていた。それも一理あるなと思いましたよ。