記事のポイント
- 政府は「第7次エネルギー基本計画」を閣議決定した
- 国民の生活にも大きく関わる重要な計画文書だが、すべて読んだ人は少ないはずだ
- 80ページ以上あるエネ基を10分程度で読めるように要約した
14年前の3月11日、東日本大震災が発生した。その翌日に福島第一原子力発電所が苛烈事故を起こし、日本のエネルギー政策を見直す転機になった。それから14年、政府は「第7次エネルギー基本計画」を閣議決定した。国民の生活にも大きく関わる重要な計画文書だが、すべて読んだ人は少ないはずだ。80ページ以上ある「7次エネ基」を10分程度で読めるように要約した。(オルタナ客員論説委員/技術士・財部 明郎)
2025年2月18日第7次エネルギー基本計画が閣議決定された。前回の第6次が2021年10月22日だから3年4か月後の改訂だ。
エネルギー基本計画は、エネルギー基本法という法律に基づいて、日本のエネルギー需給に関する方針や施策についての基本的な計画をまとめたもの。内容はエネルギー需給に関する ① 基本方針、② 長期的、総合的、計画的に講ずべき施策、③ 重点的に研究開発すべき技術。④ その他、施策を推進するために必要な事項 となっている。
なお、今回発表されたエネルギー基本計画と同時に「2040年におけるエネルギー需給の見通し」という関連資料も公開されている。
このように、エネルギー基本計画は我が国のエネルギー政策をどのようにするかという重要な計画であり、国民の生活にも大きく関わる文書だ。しかし、これを読んだ人はそれほど多くはないのではないだろうか。
そこで、この記事では、80ページ以上のボリュームがあるエネルギー基本計画をできれば10分程度で読めるように要約してみたい。
■ワンセンテンスがやたらと長い
このエネルギー基本計画(以下「基本計画」と略す)を読んで気づいたことだが、実はとても読みにくい。その理由は、以下のような特徴があるからだ。
まず、ワンセンテンスがやたらと多い。例えば「理解を丁寧に得ながら」とか、「何々の観点から」とか、「海外の事例も参考に」とか、「その遵守を促す仕組みを検討し」とか、これらを一つの文章にすべて突っ込んでいるから、文章が長々しくなって、結局何が言いたいのかとても分かりづらくなっている。
また、同じような話があちこちで繰り返し出てくる。この話、前の章でも出てきたよね。という例がいくつもあって、今どこを読んでいるのか分かりにくく、まるで迷宮に入り込んでしまったような印象を受ける。さらに、やたらとくどくどと長たらしい説明が続く場合がある。
さらに、ここには否定的なことがほとんど書かれていない。これは、財務省に提出する予算要求書と同じ書き方で書かれているからであろう。否定的に書くと予算が付かないからであろうが、すべてがむりやり肯定形で書かれているから、本当のところはどうなのかが分からない。
■エネルギー基本計画の全体像は
このように、なかなか分かりづらい基本計画であるが、とりあえず、全体像から紹介しよう。(ここからが、10分間で読めるようにまとめた。)まず、この基本計画は第Ⅰ章から第Ⅶ章まで7つの章からなっている。
- 第Ⅰ章:はじめに
- 第Ⅱ章:東京電力福島第一原子力発電所事故後の歩み
- 第Ⅲ章:第6次エネルギー基本計画以降の状況変化
- 第Ⅳ章:エネルギー政策の基本的視点(S+3E)
- 第Ⅴ章:2040年に向けた政策の方向性
- 第Ⅵ章:カーボンニュートラル実現に向けたイノベーション
- 第Ⅶ章:国民各層とのコミュニケーション
(この続きは)
■2040年に向けた目標と政策の方向性
■需要家は徹底した省エネと電化を
■データセンターは脱炭素電源の近傍に
■水素やアンモニアは次世代エネルギーか