「新しい製品が開発されたら、その特徴やブランド戦略などを、製品を製造・販売するボトラー社さんと共有する必要があります。これなくしての製品化はありえません。どの工場でどのように製造するかなど、商業生産に向けて、ボトラー社さんや部署間の調整をするのが私の仕事です」

新しく開発された製品が世に出るために奔走する。彼女はいわば、「新製品の道先案内人」でもある。乙黒は社内でそのような重要な仕事を任されているが、3人の子どもを持つ母親でもある。会社ではそんな様子を微塵も見せずにしっかりと仕事をこなしているが、育児と仕事の両立は本来、とても難しいはずだ。いったい彼女のワークライフバランスに、どんな秘密が隠されているのだろうか。
「私は特別な人間ではないし、自分の力で両立できているとは全く思っていませんよ。この会社だから、育児をしながら仕事を続けられたんだと思います」
それは乙黒が16年間、日本コカ・コーラ一筋で仕事を続けてきたことが証明している。産休や育児休暇の期間があっても、彼女はキャリアを中断することなく3度の職場復帰を果たしている。
「中2の長女は物静か、小5の次女は社交的、小2の長男がまたシャイなんですよ」。3人の子どもの特徴をそう話す乙黒は、入社4年目で長女を身ごもった際に、仕事を続けていけるかどうか、大いに悩んだのだという。