
「私にとって出産は初めての経験だし、当時の世の中はまだ、出産・育児と仕事の両立について今ほど語られていませんでした。休むことで職場の仲間に迷惑をかけてしまうと思い、申し訳ない気持ちで一杯で……」
しかし乙黒が悩んでいたことは杞憂だった。自分が子どもを授かったこと、そして産休を取りたいということを上司に報告した際、こんな言葉が返ってきた。
■「はたらくママ」を救った上司の言葉
「いつ戻ってくるの?」
この言葉を聞いて、乙黒は「気分がスッと楽になった」という。この上司だけが特別に理解のある上司だったというわけではない。3回の産休は、それぞれ違う上司への報告だったが、3人とも全く同じ言葉を返してきたという。
「正直、どんなリアクションをされるか怖い部分もあったんです。でもみなさん、嫌な顔せずにそう言ってくれました。これは会社のカルチャーなんだな、と思いました。すごくありがたいことだと思っています」
乙黒が言う「会社のカルチャー」は、働く女性を支援するさまざまな制度としても現れている。年に5日取得できるチャイルドケア休暇。そして、半休や、フレックスタイム。乙黒はこうした制度を活用して、子育てと向き合ってきた。
「子どもの学校行事や保護者会などの際に、そうした制度がとても役立ちました。子どもが小さい時には、急な発熱で私が駆けつけることが何度もあったんです。そんな時には職場の仲間にも助けてもらいました。私が職場の席を離れる時に、いつもサポートしてくれる人が現れる。家で仕事の続きをすることもありました。会社にも仲間にも本当に感謝しきりです」